第6話 メインディッシュ
伊藤 淳は千香が自殺したと聞いて、
動揺を隠せないでいた。
何故なら、鈴原を殺すように命じた筈だったからだ。
しかし、鈴原は生きている。
もし、本当の事が鈴原に知られていたら俺は
そんな考えとは裏腹に鈴原は学校側に何も報告することはなく時間だけが過ぎて行った。
何も知られてないことに安堵しつつも伊藤は今後の手はずを考えていた。
(また、事件が起こったとなるとマスコミが騒ぎ立てるな........
しかも、内のサッカー部のマネージャー。
色々と揉み消すのが大変そうだ。)
伊藤 淳の父親は政治家であり教育現場に、太いパイプを持っていた。
それも関係して伊藤がどんな不祥事を行っても揉み消すことが出来たのだ。
(チッ!にしても千香の奴....死ぬなら死ぬで役立ってから死ねよ!
全く使えねぇなぁ.....)
(まぁ、クズも生きてはいるがまだまだ遊べそうだしそれで我慢しとくかぁ....)
伊藤は今日の予定をスマホで確認する。
15:00からスポーツ新聞記者のインタビューが入っていた。
(めんどくせぇが.....ここは1つ猫被っておくか)
伊藤淳とチームメンバーが並ぶ中、
教室の一角で記者による
インタビューが行われた。
今年の意気込みやらコンディションを聞かれる中で遂にあの質問が飛び出してきた。
「亡くなられた天城 千香さんはサッカー部のマネージャーと言う事ですが.....」
ここで俺がマイクを握り話を受ける。
「はい.......とても優秀で頼れるマネージャーでした......それなのに.....」
「仲がよろしかったんですね?」
「チーム全員がそうです。
常に皆の事を考えて行動してくれる優しい人でした。」
俺はここで涙を流しながら記者に向かって話す。
「俺達は天城の為にも、
今大会は絶対に優勝します!
天国で見ている天城....応援してくれよ。」
俺の演技に騙された馬鹿な記者どもは拍手しながら俺達が教室から出ていくのを見送った。
(あぁー、疲れた。
一々うるせぇんだよ!あの糞記者がっ!
マネージャー、一人死んだくらいでガタガタ言ってんじゃねーよ。)
俺は内心でそう愚痴りつつも校庭に集まり、最後の撮影に向かった。
すると、そこに珍しい客がいた。
天城 千香の母親だった。
確か、あいつの親って離婚して母親に育てられたんだっけ?
まぁ、死んでる奴だからどーでも良いけど...
そんな事を考えていると天城の母親が俺に近づいてきた。
「天城さんのお母さんですよね?
私達に何......か?」
俺は自分の身体に起きた異常に思考と動きが完全に停止した。
グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!
小気味良いリズムを鳴らしながら天城の母親は伊藤の身体に包丁を何度も突き立てていた
あまりの行動に見ていた周りは何が起こっているのか分からずに固まっている。
臓器にまで刃物が到達したのだろう口から血を吐きながらも尋ねる。
「ゴポォッ!....なん......で」
「何で?」
天城の母親が伊藤の言葉を聞こえると箍が
ハズレた様に怒り狂い出した
「貴方のせいで!千香は!
死んだのよぉぉぉ!!!!!」
怒りのままに包丁が引き抜かれ場所関係なく伊藤は滅多刺しにされていく。
伊藤がバランスを崩し倒れると母親は馬乗りになって刺し続けている。
それは、他の大人に止められても続いていた。
伊藤の耳には最初の頃周りから聞こえる絶叫が聞こえていたが刺され続ける内に音が小さくなり今度は誰かの歩く音が鮮明に聞こえてきた。
それは黒いスーツを着た青年で伊藤の顔を見るや否や挨拶する。
「やぁ、始めまして!
今回のメインディッシュさん!」
すると、時が止まったかのように周りの景色や人がスローモーションになっていると気付く。
「あぁ、実は君と少しだけ語らいたくてね。
まぁ、所謂食材の下ごしらえの様なものさ」
「挨拶がまだだったね私の名前はイクア。
...あぁ、
イクアはそう言うと俺の事など気にも止めずに話を続ける。
「にしても、驚いたよ君の経歴には....
父親が大臣だと何でも出来るんだね。」
「君は親の権力を使って暴行、窃盗、
殺人未遂それ以外にも様々な事件を揉み消して貰っていた。」
「それを自分の力だと勘違いした君は増長していきこの学校でも好き勝手な事をするようになった。」
「"不純異性交遊"もその一つだね?」
「そして、その毒牙に掛かってしまったのが他でもないマネージャーの天城 千香だった
彼女も君の事を愛していたようで君の願いは何でも叶えたそうじゃないか。」
「君の人生は順風満帆に見えた.......」
「天城 千香が妊娠するまではね。」
「驚いたことだろう。
そして何より君は焦ったいくら揉み消しが、出来るとは言え同じ学校の生徒だバレたら君の経歴に傷が付くのは明白だった。」
「そこで、君は彼女を犯罪者に仕立て上げることにした。」
「大方、二人で楽しんでいる時にでも言ったんだろう。」
「最近、鈴原と仲が良いみたいだな。
奴と付き合ってるのか?」
「俺を愛しているのなら鈴原を突き落としてみろ!」とね
「鈴原が選ばれた理由はどうでも良い人材だったからだろう殺しても何の問題もない。」
「そして、彼女は見事、鈴原を瀕死にまで、追いやった。」
「しかし、トラブルが起きた。
鈴原の死が自殺として扱われてしまった事だ。」
「だが、天はまだ君に味方した。
鈴原は生き返りもう一度殺すチャンスを得た。」
「後は、天城に命令し実行させるだけ。」
「今度は確実に天城は犯罪者として捕まり、
お腹の子供の事を有耶無耶になりパッピーエンド.....バカにしてはよく考えた計画だったよ。」
「ん?何だね伊藤君何か言いたげだな?
.....あぁ、失礼今の君は喋りたくても喋れないんだったね。
スローモーションで刺され続けながら
私の話を聞いているんだ。
さぞ大変だろうが、まだ死なせないぞ?
種明かしが全部済んでいないからね。」
「さてと、何処まで話した.....!そうだ。
君の疑問に答えるつもりだったんだ。」
「何故、この事が天城の母親にバレたのか?」
「実際は大したことはしてない。
鈴原と千香ちゃんが分かれた後、
君と千香ちゃんが致していた行為中の
音声を録音して真相を聞き出した後、
母親に千香ちゃんの筆跡を真似てこれまでの"君の行為を丁寧に書き綴ったお手紙"
を渡しただけだ。」
「いや、あれは我ながら良く書けていたと思うよ。
あれを見た母親の顔は傑作だったぞwww
絶望と怒りが混ざり合い殺意へと昇華していく過程....あれはもう芸術と言っても過言ではない。」
「故に母親との"契約"も上手く行った。
母親の願いは"君に出来るだけ苦しみを与えつつ殺して欲しい"と言う物でね。
だから君はこうやってギリギリまで生かされているんだよ。」
「まぁしかし、母親の方が堪えられなくて、自分から"殺人"を犯してしまったから、二人とも私の胃袋に入る結果となるのだがな...」
「まぁ、メインディッシュにはパンが付き物だから.....ちょっと豪華になったとでも思っておくか!」
「さてと、長々と待たせてしまったね。
伊藤 純君、いよいよ君達二人の.......」
「魂を戴くよ。」
伊藤淳は目を覚ました。
そこは何も無い空間であり俺は椅子に縛り付けられていた。
「おい!クソガッ!これほどきやがれ!」
俺の声は虚しく誰にも届かなかった二人を除いてはどちらも顔に見覚えがある千香と千香の母親だ。
だが、二人とも全身血まみれで所々、骨まで見えている。
これはおかしい...明らかに異常だ。
俺は逃げようと足に力を入れるが力が入らない下を見るとそこには
"千香とへその緒で繋がっている"血まみれの、赤ん坊が俺の足の上に座っていた。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁ!」
誰にも届くことの無い慟哭が悪魔の
その声に耳を傾けながらイクアは愉悦の表情を浮かべるのだった。
『次のニュースです。
◯◯高校サッカー部キャプテンである高校二年の伊藤 淳君は傍観者にナイフで複数回刺されたことが致命傷となり亡くなりました。
父親である政治家........』
イクアは手元に流れるニュースを見ながら
笑顔を崩さない。
悪魔は笑いかける。
それは死んだ者を嘲笑するためかそれとも
次の犠牲者の選り好みするためなのか?
答えを知る者は本人以外いない。
続く?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます