第5話 シンジツ
僕はとある人物を僕が殺されかけたあの窓のある部屋に呼び出した。
ある人物は来るなり僕に問いかける。
「犯人が分かったって本当なんですか?」
「えぇ、やっぱりサッカー部の関係者でした。」
「.......そうなんですね。
それでどうするつもりですか?」
「実はそれを示す証拠を手に入れたんです。
これです。」
「これは?」
「学校に設置された
監視カメラのデータです。
設置された監視カメラの一部に犯人の姿が写ってたんです。
僕はこれからこれを学校に提出します。」
「だから.........」
「その前に罪を認めてくれませんか?
"天城 千香"さん。」
そう呼ばれた天城さんは僕の顔を睨み付けている。
「....何時、分かったんですか?」
「きっかけは僕が貴女に話しかけた時、
貴女は僕が落ちた時の姿は見ていなくて見たのは落ちた後だと言った。
けど、"それはあり得ない"。」
「何故なら僕は落ちた時の記憶はハッキリと覚えていたんです。
そして"落下した"時も意識は薄れていましたが落ちた後、貴女が僕を確認してはいなかった。」
「たったそれだけの理由?
随分と合理性にかけていると思うけど、」
「決定的な証拠はこれでした。」
そう言って僕はスマホの画面を見せるそこにはニュースキャスターからインタビューを受ける生徒が写っていた。
そして、天城千香の番になると止めて僕は指を指す。
「天城さんの指に付いている青いインク.....
実は僕の服に誰かが細工したみたいで青いインクが染み込ませてあったんです。
そして、僕を突き落とした人物にしか
このインクの、痕は無い。」
「インクを仕込んだ方の....」
「それはもっとあり得ない。
天城さん言ってたでしょう?
"部員なら"気付いてたってつまりあの場面にはサッカー部しかいなかった。」
「サッカー部で青いインクが付いてたのは、天城さんだけだった。」
「............」
全て聞き終わると天城さんはポケットから、カッターナイフを取り出した。
「天城さん。」
「ごめんなさい鈴原君。
私にはこうするしかないの。」
「何で?
僕は君に迷惑をかけた事なんて無い筈だ。」
「迷惑.....そうね貴方は何もしてないわ。
でも仕方ないでしょ?"彼"に頼まれたんだから」
「.......伊藤 淳だね?」
「................」
天城さんは僕の問いに答えずカッターを持って近づいてくる。
刺す気なのだろう両手でカッターを握り僕の身体に照準を合わせている。
「悪く思わないでね?鈴原君。」
そう言って刺そうと走り出した彼女を見て呟く。
「それは僕のセリフだよ。
...........イクア"見つけた"」
僕の言葉と共に時間が停まりイクアが出現する。
「おめでとう正木君。
君は見事に正解にたどり着いた。」
イクアは僕に笑顔でそう告げると天城さんに向き直り呟く。
「さぁ....."罰"を受ける時だ。」
天城さんのカッターが僕に刺さることはなかった。
走って僕の方に向かってきた
天城さんは"偶然"にも足を滑らせて僕の後ろにある窓から身体を乗り出してしまい.....
その勢いのまま頭部からコンクリートに
激突し肉体の"命が終わり"を向かえた。
無残な死体となった天城にイクアは近づき触れるとベリベリと剥がれる音がしながら彼女の魂が肉体から別れる。
その魂の匂いを嗅いだイクアは恍惚の表情を浮かべる。
「あぁ、何て独善的で強欲な魂の香り、
若いながらも素晴らしい腐り具合だ。」
イクアはそう言うと口を大きく開けて一口の内に彼女の魂を喰らった。
「うぅぅぅぅんまぁぁぁいなぁぁぁぁ!」
イクアは今まで見せたことの無い本気の笑顔で笑っていた。
「ふっふっふっ....悪魔に喰われた魂はその精神が崩壊し溶けて無くなるまで永遠の悪夢を受け続ける......
それは覚めることの無い地獄と同じ。
あぁ、ゆっくりとじっくりと私の身体を貴女の恐怖と絶望で満たしてくだ無いね。」
そう言うと彼はその場に遺体だけ残し
後にするのだった。
天城千香は目を覚ました。
「私は....一体....ここは?」
そんな彼女は自分の身体を確認すると彼女は意識を失うのだった。
天城さんが窓から飛び降り死んだ事を確認した僕はその光景に恐怖を感じていた。
それは何故なら彼女の身体から魂が引き剥がされイクアに喰われる所まで全て見てしまったからであろう。
自分が生きるために天城さんを犠牲にした...
向こうも同じ事をやってきた寧ろ僕は一度、殺されかけている。
イクアの言っていた"平等"
目には目を歯には歯を.....殺人には殺人を
彼の中ではルールに則った正当な対価......
だけど、僕にとっては違う。
例え、殺されかけても虐められても僕は
人を貶めてまで助かるのは違う気がしていた。
だからこそ、イクアが天城さんの魂を喰らう時、僕はただ祈っていた。
彼女の心が少しでも救われますように...と
悪魔に心を売った
僕が言えたセリフではない。
でも、祈りたかった。
それが例え偽善であっても........
そんな、僕の元に悪魔が戻ってきた。
「お疲れ様でした。
これで"1つ目の対価"は問題ありませんよ。」
「1つ目?」
「これは驚いた!まさか、対価があんな
魂1つで済むと本気で思っていたのですか?
全然足りませんよ。
貴方にはまだまだ働いて貰わないと...」
(これは逃げられないな......)
どんなに偽善的な事を言っても、
僕は命が惜しかった。
生きたかったそれが例え
悪魔の力を借りたものでも.....
だからこそだろう僕は、
終わりが知りたかった。
「イクア、僕は一体いくつの対価を支払わないといけないんだ?」
「そうですねぇ.....ではこうしましょう!」
「この学校には芳醇な匂いを放つ魂が、
"複数"あります......
それを全て頂けた暁には契約が終了したと
見なしましょう。」
「複数......そんなにあるのか?」
僕の質問にイクアは悲しい顔をする。
「えぇ、残念ながらこの学校は悪魔の
私から見ても腐っています。」
「全く嘆かわしい事です。
優秀で健全な生徒を育てるべき学校が
悪魔の食堂になるなど......」
これは本心ではない....当然だ。
悪魔にとってここはご馳走がたんまりと揃ったレストランであり目の前にいる
僕は優秀な給仕係。
全ての魂を喰らい尽くすまで、
どんなに時間が掛かることだろう....
しかし、悪魔はそれでも笑いかける。
何故なら餌は待っていれば直ぐに
手元に運ばれてくるのだから........
イクアは呟く....
「さぁ、オードブルは堪能しましたし次は」
「メインディッシュと行きましょう!」
続く
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