第3話 タマシイ
「君以外の魂を僕に渡してくれ。」
(魂を渡す?)
「そうだ。
僕達の主食は人間の魂でね。
それも下品で腐ってる様な物
ほど美味しいんだよ。」
(だったら勝手に持っていけば良いだろう?
僕を蘇らせられる力があるんなら)
「それがそう上手くは行かないんだよ。
悪魔には悪魔のルールがあって
それに則った魂じゃないと
食べることが出来ないんだよ。」
(ルール?)
「悪魔によっても様々だが僕の場合は、
"罪と罰が平等な魂"でないと食べられない。
罪に対して適切な罰が下った魂でしかね。」
「だからこそ僕は人間と協力しなきゃ、
ご飯が食べられない。
君を蘇らせたのにはそう言う訳があるのさ」
(僕を馬鹿にするために蘇らせた訳じゃないのか?)
「あぁ、勿論それもあるよ。
おかげで大爆笑物だったよwww」
(最低だなお前。)
僕の言葉にイクアは笑いながら答える。
「あはははは!当たり前じゃないか!
僕は悪魔だよ。」
一頻り笑い終わるとイクアが話を続ける。
「話を戻そう。
その為に君には罪と罰が平等になる魂を見つけて貰う....そうだな手始めに」
「君を"突き落とした"
犯人を見つけようか。」
イクアが求めた対価である魂。
僕を突き落とした人間、それを探すために僕は苦心していた。
何故、大人しく言うことを聞くのか?
単純だやらなければまた脳死した植物状態に戻されるからだ。
散々、馬鹿にされた事に怒り僕がイクアに反論しているとイクアは指を一回鳴らす。
すると、先程まで自分が自由に動かすことが出来た身体が人形の様に動かなくなってしまった。
「こうなりたくなければ、
真面目に探すことだね。」
そう言われた為、僕は自分を突き落とした犯人を探すのに躍起になっていた。
しかし、成果は芳しくなかった。
監視カメラもない教室の窓でしかも押されたのは一瞬....他の人に話を聞こうにも誰も答えてくれない。
情報が手に入らないため誰が犯人か調べる手段が全く無かった。
「全く....君って本当に人望無いんだねぇ」
そんな姿を見たイクアが落胆の表情で言った。
(仕方ないだろ!虐められている僕に味方すれば味方した奴が虐められる。)
「そーんなこといって...虐められなくたって友達なんていなかっただろう君?」
(煩いな!これでも真剣に取り組んでいるんだよ。)
一向に進展しない状況に痺れを切らした
イクアがアドバイスをする。
「仕方ないなぁ....じゃあ、君が突き落とされた時の事を思い出してみなよ?
少なくとも君の近くにいた奴の中に犯人がいる筈だからね。」
僕は突き落とされた時の事を思い出す。
あれは丁度、4時間目の授業が終わって昼休みになった時の事だった。
僕は学食に行ってパンを買おうと歩いていたとき.....そうだサッカー部の奴等に絡まれて因縁を付けられたんだ。
そうしたら、キャプテンだった伊藤 淳が現れて僕にサッカーボールをぶつけて遊んでいた...その後に僕は窓から落ちたんだ。
僕の話を聞いたイクアがビックリした顔をしながら呟く。
「うっわぁ、まるでドラマで使えそうなほどのベタな虐め風景だなぁ。
もう使い古されたネタって感じだぞ。
正木君、君が脚本家なら僕は君をクビにしてるね.....」
(本当に煩いな。
そうなると、僕の死にはサッカー部の連中が関わっているのは間違いない。)
「だろうね。
恐らくサッカー部の誰かが君を突き落としたんだ.....問題は動機だな。」
(動機?僕が恨まれてたりしたってこと?)
「恨みだけが動機じゃない。
前にも言ったろう?君はこのクラスの
おもちゃだって.....
多分だけど動機はもっと単純だと思うぞ?」
(何なんだよそれって?)
「それを調べるのが君の仕事だよ。
はい、頑張ってー!」
(......気軽に言ってくれるよ。)
僕はイクアからのアドバイスを受けて自分なりにサッカー部を調べてみた。
伊藤 淳がキャプテンとしてこのチームを、実質支配している見たいで他のメンバーは皆、彼の命令には従うらしい。
サッカー部自体強いおかげもあって学校側もある程度の問題行動は目を瞑っているみたいだ。
恐らくだけどメンバーに話を聞いても答えてくれるとは思わなかった。
それに只でさえ僕は虐められっ子まともに取り合えっては貰えないだろう。
そのなかでも一人だけ可能性が
高い人がいた。
サッカー部のマネージャーをしている
天城
彼女は元々、大人しい性格で虐められている僕にも普通に接してくれていた。
僕は彼女に事情を聞こうと思い誰もいない場所を見計らって彼女に声をかけた。
「行動だけ見たらストーカーの手口だぞ。」
(煩い。)
「あの.....天城さん?」
声をかけられた彼女は驚きながら振り返った。
「!?あっ!鈴原くん。どうしたの?」
「実は天城さんに聞きたいことがあって...
僕が突き落とされた時の事なんだけど」
「突き落とされたって....
誰かが鈴原くん殺そうとしたと思ってるの?」
イクアに渡す魂を選別するための情報を調べているなんて言えないし行っても信じて貰えないと思った僕は咄嗟に良いわけを考えた。
「いや、そうじゃないんだけど......
まだ記憶が曖昧で色んな人から話を聞いて整理したいと思っているんだ。」
「そうなんだ。
私は貴方が落ちた所を見てなくて...
"部員"なら気付いてたのかもしれないけど私が気付いたのは落ちた後だけだったから」
「そっかじゃあ、落ちた後でも良いんだ。
何か変わった事とか無かった?」
「変な言い方だけど無かったと思う。
私が思い出せてないだけかもしれないけど」
「.....ありがとう。
また何か思い出したら教えて。」
そう言って僕は自分の教室に戻っていった。
鈴原が見えなくなると2人のやり取りを見ていた伊藤 が天城の前に現れる。
「おい千香.....てめぇアイツに何喋った?」
「淳!......何も言ってないよ。」
「まぁ良い。
にしてもアイツ変に嗅ぎ回りやがって、
ウザいったらねぇぜ。」
伊藤は鈴原が嗅ぎ回っていることに苛立ちを覚えるも天城に向き直る。
「あー!イライラする....おい千香。
"アレ"やんぞ放課後何時もの場所に来い。」
「........分かった。」
そうして二人が立ち去る姿を見ていたイクアが顎に手を当てて考える。
「ふーむ、何やらややこしくなってきそうだなぁ.....さーて、正木君は果たして"正解"にたどり着けるのかな....あはは!」
今後の展開を考えたイクアの表情は歪んだ笑顔に変わっていた。
正直、イクアにとって正解などどうでも良い
問題は魂を"どれだけ美味しく"食べることが出来るのか....その一点に尽きる。
「さてと、アドバイスだけじゃ正直退屈してきたし.....」
「僕もちょっとは動こうかな?」
続く
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