第8話 聡子 3

聡子に許して貰おうなんて、なんて虫の良い話なんだ。あんなに聡子にひどいことをしたのに。

そうだ俺はせめてもの罪滅ぼしのためにこの後悔の念をもち続けて死んでゆくんだ。

それがせめてもの罪滅ぼしだ。

聡子、俺を憎んでくれ、それがせめてもの救いだ。

なのに公園を見渡せる窓から聡子はじっとこっちを見つめている。そこには安堵の表情が浮かぶ。俺が雪に埋れて死に行こうとしていることに安堵しているのか。

いや違う聡子はそんなことを思う女ではない。

では生きてもいいよと言っているのか。

俺のことを許してくれるのか、いや許してもらおうなんて思わない。

でも許してくれるなら、なんて心安らかに死んで行けるのだろう。

俺はベランダの聡子に手を差し伸べる。

すると聡子はうれしそうに微笑んだ。こんなにも心が荒んでいるのに、なんて癒される笑顔だ。そんな物がすぐ隣にあったのに俺はそんなことにも気付かず生きてきた。

いやいいだろう。それが分かって死んで行ける。そろそろ意識が朦朧としてきた。

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