第5話 サンタさん 2
遊ぶ私たちはサンタさんと多くの接触があった訳ではない。お互いに干渉はしなかった。私たちがサンタさんと言葉を交わすことは基本的になかったし、サンタさんが私たちの方に寄ってくる事もなかった。
ただそこにいるだけ。
ずっと前からある、ベンチの上の置物のようなその存在に、注意をはらうことはなかった。だから名前も知らないし歳も知らない。
でもいつしか、
サンタさんと呼ばれるようになっていた。ではなぜサンタさんと呼ばれるようになったのかというと、顔中白い髭に覆われ、これはホームレスだから仕方のない事だけれど、それは見事に真っ白だった。つまりものすごい高齢だったという事なんだけれど。その頃の私たちにそんなことがわかるはずもなかった。そして赤いニット帽、ダブダブのコートあの頃の私達のにとっては、やはりサンタさんだった。そしてやはりそんなに若くは無かったんだろうと思う。体が疲れるのか、座っていないときはベンチに横たわっていた。そう今ベンチに横たわっているように。
あそこにいるのがサンタさんでないことは分かっている。 でも私はサンタさんに
謝りたいのか、サンタさんとしか思えない、サンタさん、ごめんなさいと言えたら私の心はどれだけ救われるだろう、
ごめんなさい。
ごめんなさい。
なんて言うことだろう。サンタさんは私にごめんなさいと言わせてくれるためにそこにいるの、私を救いにきてくれたの、なんて優しいんだろう、そうだサンタさんは優しいい、あの優しい目でいつだって遊ぶ私たちを見守ってくれていた。
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