第4話 聡子
聡子が戸惑った表情をしている。
それはそうだ、聡子は今更なんだと思っているだろう。
でももしかしたら・・・・・。
聡子ほど俺を愛してくれた女はいない。それは今だからわかる、実の親だってこんなにも俺のことを愛してはくれなかった。
でも俺はその愛に答えるどころではない。
その愛が煩わしく、憎みすらした。その想いは聡子に向けられた。でもそんな俺の仕打ちにも聡子はめげることはなく、聡子は献身的に俺を支えようとした。聡子がなぜ俺を支えようとしたのかわからなかった。
それは今でもわからない。
たしかに俺は聡子から愛されていたのは分かる。でもだからといって、その愛に俺が応えたかと言えば、そんなことはなかった。
俺が聡子と出会ったのは、中学に入った頃だった。聡子は可愛かったから俺に近寄らなくても、だれかもっとまともな男と付き合うことができたはずだった。
でも聡子は俺の世話を焼いた。その頃の俺はそういう聡子の所業が自分を安全なところにおいた偽善的の行為、もしくは自己満足を満たす行為と思っていたいた。
だから聡子が俺に世話を焼けば焼くほどその行為を嫌悪し、そのことを後悔させてやろうという思いだった。聡子がいる前でわざと物を万引きする。すると聡子は自分の小遣いでその商品の払いをする、そして店の人間に謝る。わざと少し優しく接して、聡子を喜ばせる、そして聡子に弁当を作らせてそれを目の前で、地面にぶちまける。そして足で踏みつける。
聡子のその時の悲しそうな顔が今では胸を締め付ける。なぜあんなことをしたんだろう。今なら分かる、聡子はあの時どんな思いだったのだろうと。
でもあの頃はザマアミロという気持ちだった。
そこまでしても聡子は俺を許した。そして高校を卒業する頃、俺たちは結婚した。
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