第2話 公園が見渡せる窓
冷たい。
いつのまにか雪が積もっている。
昨夜からかなり気温が下がったから雪が降りそうだとは思っていたが、本格的に降って来た。
でも本当に降ってくるとさすがにこたえる。これは死ぬかもという思いが湧く。そうだ俺のような、にわかホームレスに、こんな寒い雪の日を乗り切る術も、根性も、ましてや希望もない。拾ったいくつもの着るものとは言えないようなボロ切れを多量に着込んで入るが、そもそもが防寒のものではない、おそらく今着ているボロボロコートでは命さえ、そんなにもつまい。
そう、もたないだろう。
まあ、それはそれでいいのかもしれない。
今まで散々なことをして来た。
その報いが、このホームレスに身をやつし、今死にかけている、別に死んでもいい。
段々意識が飛んでゆく。
ふと疑問がわく、このまま何も分からなくなり、死んでゆくのか、こんな死に方なのか、
公園で
寒さで、
そして次の瞬間
まあそれでもいいかと思う。
もう何もない。
今、ここで死ななかったとしても、明日は死ぬかもしれない、明日死ななかったとしても明後日は死ぬかもしれない。
この冬を乗り切ったとしても、次の冬には死ぬかもしれない、結局その繰り返しだ、
遅いか、
早いかの違いだけだ。
死んでく。
そう思った瞬間、
俺は目を開けて周りを見渡した、住宅に囲まれているこんな小さな児童公園を見渡せるような窓が見えた、そしてそこに一人の女がいて、俺を見下ろしている。
誰だあの女は、こんな哀れなホームレスを見て少しでも優越感に浸りたいのか、たんに哀れんでいるのか、どうでもいい、俺はこのまま凍え死ぬんだ。
いや待て。
俺を見つめる女なんて一人しかいないじゃないか、ましてこんな落ちぶれた俺を見ようとする女、そう聡子だ、あれは聡子だ、俺は朦朧とする頭であの女が聡子だと言うことを疑わない。
この最後の時にお前は現れて来てくれた。
いや俺への当てつけか。
復讐か
なんだっていい、会いにきてくれただけで十分だ。
聡子、
聡子。
ああなんと言うことだ聡子がこの俺の命の尽きる瞬間に逢いに来てくれた。それが文句を言うだけでもいい、復讐をするだけでもい。ただただ、今はお前が愛おしい、あの時お前にそんな言葉をかけていたら、何もかもが違っていた。聡子のことは今では本当に愛おしい。俺は聡子に向かって手を伸ばした。届くはずのない手。それでもいい、伸ばすだけでいい、ただそれだけでいいんだ。
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