ミエ― ①
賢者と将軍。次の宿は決まっていた・・・・が。
「将軍様、僕はちょっと個人的な用事が向こうにあるので先に宿に行っていてくれませんか?」
「そうか?私も、向こうに野暮用があったんだ」
「奇遇ですね」
「奇遇だな」
そう、賢者と将軍は顔を見合わせて、にっこりと笑った。
「「敵襲~~~!!敵襲~~~~!!」」
「なんだと!敵の数はいかほどか!?すぐに報告せよ!!」
男爵は、寝所で眠っていたが飛び起きて障子を開けて叫ぶ。
そこへ、部下がやって来て膝をついて報告する。
「それが・・・敵は二人です・・・」
「なに?たった二人で何を騒いでいるのだ・・・まったく・・・」
男爵は、その報告を聞いて肩透かしを食らった気分になった。
だが、部下は続いて告げた。
「それが・・・魔王軍の将軍と・・・賢者様です・・・」
「え・・・・」
男爵の顔は真っ青になった。
”あ・・・詰んだ・・・”
ここはミエ―のイガの国。
ここの住民は全員が間者としての訓練を受けていると聞いている。
「「お覚悟!!」」
十数人の男たちが刀で将軍に一斉に切りかかってくる。
ブン!!
それを、大鎌の一振りで全員を吹っ飛ばす。十メートルくらいは飛んだであろうか。
「安心しろ。峰打ちだ」
将軍は、告げる。
だが、取り囲んでいる男たちは思った。
”そんな勢いの大鎌で殴られたら、峰打ちでも当たり所が悪けりゃ死んじゃうでしょ!!”
全員、膝がガタガタと震えている。
”狙撃隊はまだか!?”
獅子奮迅の将軍から離れること40メートルほどの民家の屋根の上。
鉄砲を構える3人の男たち。
殺すつもりはない。麻酔銃である。
その引き金に、指をかけた・・・・その時。
ユラッ・・・
と黒い影のようなものが見えた気がした。
次の瞬間、意識が刈り取られた。
もちろん、賢者である。
そこかしこにいる、弓を構えた者や鉄砲を構えた者を次々と無力化していく。
数千人いるイガの民。だが、将軍と賢者は全員を倒してしまう勢いで倒していく。
二人を取り囲む男たちはすでに数百人に上るであろう。
だが・・・イガの民たちは勝てる気がしていなかった。
「きりがないな・・・」
「じゃあ、ちょっと本気になるかな?」
賢者と将軍は、まだ実力の十分の一も出していなかった。
もう少し本気を出そうかと思った時・・・
取り囲む男たちの一角が割れ、一人の男が進み出てきた。
「将軍様、そして賢者様。わたくしはイガの国の頭領をさせてもらっている男爵です」
そう言って、頭を下げた。
「お願いがございます。この民たちには何の罪もありません。ですので、一騎打ちで決着をつけさせていただきたい。結果、私が負けた場合には私のみが咎を受けます。ですから、この者たちを見逃していただけないでしょうか?」
将軍と賢者は顔を見合わせる。
「私としても、無駄に血を流したいわけではない。よかろう」
将軍が言う。
「ねえ、将軍さま。僕とどちらが相手をする?」
「今回は、私に相手をさせてくれ」
かなりヤル気の将軍。何か、思うところがあるらしい。
「かたじけない。では、尋常に勝負」
男爵は、剣を上段に構えた。
じりじりとすり足で徐々に間合いを詰めてくる。
びりびりと闘気が膨れ上がってくる。
「いやぁ~~~~~!!!」
なかなかのスピードで一気に間合いを詰めると刀を振り下ろそうとした。
ゴン!
それより早く、将軍様は大鎌の柄で男爵の頭を叩いた。
男爵は白目をむいて地面にはいつくばってしまった。
結果としては、一撃で決着が決まってしまった。
すると、周りを取り囲んでいた全員がひざまずいて将軍に首を垂れた。
「ん?何の真似だ?」
当惑する将軍。
すると、前列にいた男が言った。
「イガの国では、頭領と一対一の勝負で勝利したものは次の頭領となる決まりです」
「今日から、あなた様がイガの国の頭領です。我ら一同、頭領様に精一杯尽くす所存にございます!」
「え・・・えぇ!?そんなつもりではなかったのだが・・」
困惑する将軍。
イガの国の掟。それは国で一番強い物が頭領になるというもの。
もともと、イガは弱小国であった。
そのため、国を守るためには
将軍は賢者を見て、困ったように言う。
「ええ・・と・・・賢者・・どうしよう・・・」
「将軍様、部下が増えたと思えばいいんじゃない?この方が、僕らの邪魔をしなくなっていいと思うよ」
ニコニコと言う賢者。
「えぇ・・・困ったな」
将軍は、困ったように頭を下げ続ける男たちを見回して頭を掻いた。
だが、二人を監視していた者たち・・・イガの間者たちによる監視という問題を解決することができたのであった。
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