ミエ― ②

「それで、これが例の物か?」

「はい、お館さま」


 ここは男爵の館。

 応接間には、包帯でぐるぐる巻きになっている男爵と将軍。


 賢者は、けが人の治療のためここにはいない。


「では、確認させてもらおう」


 男爵が持ってきた、大きな茶箱。

 将軍はふたを開けた。


 その箱にぎっしりと詰まっていたのは・・・大量の写真だった。


 将軍は、その写真を手に取る。

 旅をしている賢者の写真。料理している賢者の写真。

 そして・・・


 入浴中の賢者の全裸写真。


 すべてが賢者を隠し撮りしてた写真であった。


「これらの写真は、すべて聖女様に提供したもののコピーでございます」


 それを手に取る将軍。

 うつむいているため、表情は見えない。


 だが、手が細かく震えている。

 そして・・・立ち昇るオーラ。


 怒っている。


 男爵は、恐怖していた。



「男爵よ」


「は・・はいぃ」


「王城にある、この写真のオリジナル。処分することは可能か?」


 低い、地の底から立ち昇る可能様な声。

 よく見ると、こめかみに血管が浮き出ている。


「はは!命に変えましても!!」

「頼んだぞ」






 聖王国の王城。

 午後、執務室で書類仕事をしていた聖女。

 その時、バタバタと騒がしい声がしてきた。


「どうしたの?」

「聖女様。ボヤが発生しました。念のために避難してください」

「ボヤですか・・・どこで発生したの?」

「それが・・・聖女様のお部屋になります」

「へ?」




 聖女の私室兼寝室。

 そこはオレンジ色の炎に包まれていた。


 本来、王城は魔法による防火対策がされている。

 そのため、火が燃え広がらないはずなのである。

 しかし・・・なぜか激しく燃える炎。


 他の部屋には燃え広がる様子もないため、やがて鎮火すると思われる。


 ところが、そこへ聖女が走って来た。


「聖女様、危険です!!何してるんですか!?お逃げください!!」


「いや~~~!!あそこには大切なものが!!消して!早く消して~~~!!

~~~!!」


 聖女の願いもむなしく、私室にあるものはすべて焼け落ちて・・・炎は鎮火した。


 

 聖女は、茫然とクローゼットの成れの果ての前に座り込んでしまった。

 その中には・・・賢者の写真がすべて隠されていたのだ。


「うう・・・私の勇者様・・・」


 涙を流す聖女様。


 だが、まだ聖女は知らない。

 

 イガの衆が、すでに将軍の部下になってしまっていることを。

 賢者の写真は二度と手に入らないのだ。

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