第4部 異世界の勇者から逃げ回る。
第4部 プロローグ
「うみは・・・いいなぁ・・・」
『大変失礼しました~~~~~~。マイマスター、許して下さーーい!!』
あれから2週間。
賢者は、海を見つめ続けていた。
さすがに、賢者の称号はこれはまずいと思っていた。
『申し訳ありません。調子に乗ってました~~~!!』
「うみは・・・いいなぁ・・・」
「聖女様。勇者と名乗る者が目通りを願っています」
「え?勇者様♡!? すぐ会うわ!!」
聖女は、部下の言葉にうきうきと答えた。
なんと!!勇者様から会いに来てくれるとは!!
喜び勇んで、謁見の間に出向いたのだが・・・
その場にいたのは、セーラー服の女の子。
あの賢者ではなかった。
「聖王国の聖女様とお聞きしました。わたくしは日本という異世界にて勇者をしております」
聖女様は、明らかに不機嫌な声で答える。
「その、いけ会の勇者とやら。何の用なの?」
「異世界の日本から来ました。この世界に破滅が迫っているという警告に参りました。私の世界も含めて、このままでは大変なことになります」
「は?どういうこと?」
「この世界と、私の世界の融合が始まっております。このままだと、融合が進むだけではなく、両方の世界のエネルギーが集結してしまい破滅が起こってしまいます。
異世界の勇者の言葉を詳しく聞いた聖女。
思い当たることがあったのだ。
「ちょっと、私だけの問題じゃなさそうだわ。ちょっと待っててね」
黒い板を取り出して、操作を始める。
「いま、魔王と連絡を取るから」
異世界の勇者は、それを見て眉間を押さえて聞いた。
「あの・・・その手に持ったものはいったい・・」
「これ?スマホよ?知らないの?」
異世界の勇者は、頭痛をこらえながら聞いた。
「そのスマホ・・・いつからお使いなのでしょうか?」
「え?・・・・あれ?」
聖女は、手に持ったスマホを見ながら困惑した。
異世界の勇者は、眉間を押さえながらつぶやく。
「こんなに融合が進んでいるとは・・・」
ホッカイドーのソーウンキョー。
聖女と異世界の勇者は、アサヒカワ空港からやって来た。
飛行機に乗っている間、異世界の勇者は茫然としていた。
「ここは異世界・・ここは異世界・・・」
そのまま、タクシーで魔王城にやって来た。
魔王城の王座の前。
聖女と異世界の勇者が来ていた。
将軍様も魔王の側に控えている。
「それで、世界の破滅とな?どういう事じゃ?」
異世界の勇者は、茫然としながら聞いた。
「ええと・・・魔王と聖女が・・・メル友?」
「別にメル友じゃないぞ。ただの知り合いじゃ」
「え~~魔王ひどいんじゃない?」
気を取り直して、異世界の勇者が話し始めた。
「私の世界とこの世界の融合が始まっています。このまま融合が進めば、2つの世界のエネルギーが集中し、両方の世界が破壊されてしまいます」
すると、将軍様が驚いたように話し始めた。
「なんと、そうであったか」
「その兆候がありましたか?」
「そうだ。ハコダテとアオモリの間の海で、白と黒に彩られた凶暴な海獣が現れて魚をむさぼっていると報告を受けている。まるで魔獣のようだとな」
「・・・それは・・・シャチね・・・」
「あと、ホッカイドーの東部で、今まで見たことのない巨大な熊が発生していると報告を受けている。それも魔獣のようだと」
「それ・・・ヒグマね・・・」
「そうか・・・そなたの世界はそんな魔獣が跋扈する世界であったか」
異世界の勇者は、大きな声で言った。
「ええ??こっちが異世界じゃないの?こっちのほうが危険な魔獣とか魔物とかいないの?ええ???」
「魔獣?そんなものはいないが・・?」
「それじゃ、魔物は?ゴブリンとかオーグとか?」
「は?ゴブリンやオーグはいるが、平和に暮らしているが?」
「ドラゴンとかいないの?」
将軍はあきれたように言う。
「そんなおとぎ話の生き物がいるわけなかろう?」
異世界の勇者は、頭を抱えた。
日本と異世界・・・このままだと、日本の方が危険な場所という事になる。
「それで、融合した原因は分かっておるのじゃな?」
魔王様が聞いてきた。
威厳が感じられる。
「はい。なんらかの原因のため、次元の裂け目が発生したのです」
「ほお・・次元の裂け目とな?どこにじゃ?」
「はい! 北海道の函館から青森の下北半島の恐山までまっすぐに裂け目が発生したのが原因です。
魔王は、将軍を見た。
聖女も、将軍を見た。
将軍はあさっての方角を見た。口をとがらして、ヒューヒューという息を吐く。
口笛のつもりらしい。
そう・・・
将軍様が、前勇者を攻撃した虚空斬。その影響が残り、異世界との融合が進んだらしい。
つまりは、この世界の危機は将軍様のせいであった。
「それで、対応策はあるのか?」
「はい。私の世界とこの世界の両方の勇者が同時に、それぞれの世界から聖剣を使って次元の裂け目を閉じれば修復できましょう」
すると・・・その場にいた女性たちが微妙な表情になった。
もじもじと股間を動かしている。
「この世界の勇者様はどちらにいるか分るでしょうか?」
魔王が回答する。
「すまないが・・・勇者の今の居場所は分からないのだ」
「え・・・そうなんですか?」
異世界の勇者は、がっくり来ている。
それを見た聖女。
「シコクよ」
「え?」
「勇者さまは、シコクにいるわ」
さすがは、イガの衆を操る聖女。すでに、
「シコクですね、そちらに向かいます」
異世界の勇者が言う。
すると・・・
「私も行くぞ!賢者を迎えに行かなくては・・・」
将軍様が言う。
こうして、異世界の勇者と将軍様による賢者を追う旅が始まったのだ。
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