第3部 エピローグ

「海はいいなぁ・・・・」

 太平洋の波が、砂浜に押し寄せてくる。


 砂浜に座り込んだままの賢者。

 ぼーっと海を見続けている。







「いやぁ~~マジで死んだかと思ったぞ!!」


 あっはっは、と笑いながら上機嫌でしゃべる魔王様。


「いやあ、もう入って来た瞬間、天国に行ったかと思ったのじゃ」


 大声で話しているが・・・独り言である。

 あまりに、うれしい。だが、さすがに誰かに言いふらすわけにはいかない。

 仕方なく、自室で独り言を・・・大声で言っているのだ。


「それにしても、あの時の賢者の表情・・」


 怯えたようにうるんだ瞳で見上げてくる表情。

 触るたびに、びくっと痙攣してくる反応。


 ゾクゾクッ・・・


 思い出すだけで、背筋を快感が貫き下半身が熱くなる。


「またしたいのぉ・・・」





「何よ!聖女の称号が無くなってないじゃないの!」


 執務室に、溜まっていた書類はいくつも山になっていた。

 その書類と格闘しながら、聖女はイライラと叫ぶ。


 もとより、勇者といたしてしまうことで聖女の称号が無くなるわけが無かったのだ。

 聖女という宿命から逃れられると思っていた聖女は当てが外れて、ものすごく不機嫌である。


 それならば、あんなことしなかったのに!


 あの夜のことを思い出した。勇者様のアレが、私の中に・・


 下半身が、ジュン・・と反応した。


「またしたいなぁ・・・」





「やっぱり、一晩だけじゃだめだったか~」

 妊娠検査薬を手に、魔法使いはあっけらかんと笑う。


 結果は、陰性。

 妊娠していなかったのである。


 もともとの目的は、賢者と魔法使いの子供を作ること。

 目的を果たせなかったのである。


「うーん、あんなに頑張ったんだけどな」

 

 あの世のことを思い出す。

 下半身が、うずうずしてくる。


「また、しなきゃ・・・」





『マイマスター。いつまで落ち込んでいるんですか?』

「・・・・」

『もう、いいじゃありませんか。

「・・・・」



 そうだったのだ。

 賢者は、結局は誰とも行為を行ってはいなかったのだ。


 聖剣である小狐丸が賢者の力に触れた時、賢者の称号によって精神世界に全員が入り込んだのである。

 そして、精神世界の中においては・・・事に至れなかったのである。


 もし、合意がなかった場合にどうなるかと言うと・・・その人物は、個人的に妄想の世界にとらわれることになるのだ。


 つまり、魔王も聖女も魔法使いも妄想の中でHしたに過ぎなかった。

 

 賢者の称号はすぐにそれに気づいた。

 それにもかかわらず、面白がって賢者を好き放題しつづけたのだ。


 その世界は、賢者の力で作られた精神世界。


 全員の妄想の世界を・・・賢者は見続けることになった。

 それぞれの女性に好きなようにもてあそばれる自分を延々と見続けたのだ。


 あんなことや、こんなことまで。

 後ろから・・上に載られて。

 ろうそくや鞭まで。

 何度も、何度も。



 おかげで、すっかり女性に対しトラウマになってしまった。

 唯一・・・ 賢者を弄ぶような妄想をしなかったのは、将軍様だけである。








「うみは・・・・いいなぁ・・・」


 心に深い傷を刻み込んでしまった賢者。

 視点の定まらない、死んだ魚のような目をしてつぶやくのであった。






 その頃。

 ゴリョーカクの城の窓から、将軍様も海を見つめていた。

 その手には、小狐丸が握られていた。

”ご主人様ぁ・・・”


 小さくつぶやく。

「・・・賢者よ。私は待っているぞ。だから・・・帰って来てくれ」















 ある人物が、この世界に降り立った。

 その姿は、セーラー服を着た、女の子。


 彼女は、あたりを見回してつぶやいた。


「え?・・・もう、こんなに融合が進んでいるの?

 大変・・・このままでは、すぐに世界が破滅してしまう」




第4部に続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る