第3部 ハニートラップから逃げ回る

第3部 プロローグ 聖女と魔王から逃げだした

 聖王国の聖女の執務室。

 聖女は魔法使いに秘密裏に依頼した調査結果の報告の中間報告を受けていた。


「聖女様。やっぱり、無理ですよ。今のところ手がかりは全くありませんよ」

「何かあるはずよ。何とかして見つけて頂戴」


 魔法使いはため息をついて言った。


「今のところ、聖女の称号を無くす方法なんてありませんよ。諦めたらどうなんですか?」


 しかし、聖女は真剣であった。


「時間がかかってもいいの。なんとしてでも、普通の人間になる方法を探し出してちょうだい」


 聖王国の王座に就いて以来、気の休まる暇がない。

 毎日、多くの来賓がやってくる。海外の国賓から市民団体や貴族たち。

 みんな、聖女を一目見ようとやってくるのだ。

 実は、密かに彼らは聖女との謁見を”おっぱい詣で”と呼んでいるのは秘密である。

 そして、毎日積みあがる数々の報告書の山。聖王国は、まだ借金まみれなのだ。


 そして、毎日やってくる伯爵によるスパルタ教育。

 伯爵とすれば、聖女を立派な国王にしようと使命に燃えているのだ。


 聖女は、もううんざりしていた。

 それもこれも、自分が”聖女”であるせいと考えた。

 自分が聖女でなくなれば、解放されるはず。


「なにか、ヒントとかないの?地方の伝承とかでもいいわ」


 魔法使いは、頭を抱えた。


「そんな、無茶言わないでくださいよ。

 純潔を失い聖女でなくなったとかのおとぎ話とかはありますが・・・・」


 聖女は、目を見開いた。


「それよ!」

「はぁ?」

「その方法は考えてなかったわ。試してみる必要ありそうね・・・」

「え?」


 そして、聖女は立ち上がり出かける支度を始めた。


「せ・・・聖女様? どこに行くんですか?」


 聖女は、にっこりと・・・何か吹っ切れた晴れやかな笑顔で答えた。


「もちろん、魔王領に行くのよ。

 だって、聖女は勇者と結ばれるって古来より決まっているでしょ?」





「賢者様。魔王様が呼んでおります」

「はあい、今行きます。魔王様はどこですか?」

「応接室にいらっしゃいます」

「わかりました~」


 夕食の支度中、魔王様の側近のメイドに伝えられた。

 賢者は、将軍と共に魔王城に来ている。

 ただ、将軍はなにやら国境の海峡付近で怪しい現象が出ているとのことで、朝からずっと会議中である。


 なので、賢者は一人で応接室に向かった。


 ノックをして声をかける。


「魔王様、お呼びのとのことで参りました」

「おぅ賢者。中に入るのじゃ」


 賢者が中に入ると、そこには魔王様と共に・・・聖女様がソファに座っていた。


「急に聖女が来たんだが、お前に用があるとのことなのじゃ」

「はぁ・・」


 賢者は、ソファに向かい合わせに座る魔王様と聖女様から少し離れて立った。


 聖女は、いつも以上に胸を強調したぴったりした服装。


「それにしても、聖女よ・・・また大きくなったんじゃないのか?」

「ほっといてよ」

 以前は、メロンくらいの大きさだったその大きさが、今は小型のスイカくらいになっている。


 聖女様は、賢者ににっこりと微笑んで自分の横を示して言った。

「さぁ、勇者様。ここに座ってください」

「え? いや、大丈夫です聖女様。それで、ご用件は何でしょうか?」


 すると、聖女様はちょっと口を尖らせた。そして立ち上がり賢者の横に立った。


「ちょっと、勇者様に協力してもらいたいことがあるの。お・ね・が・い」


 賢者の腕を取る。


「え?え? いったい何ですか?」

「それは~、二人きりでないと話せないなぁ」


 聖女は賢者の腕を抱いてくる。

 うるんだ瞳で、上目遣いで見つめてくる。

 あざとい。


 そして、おっぱいが当たっている・・・どころではない。

 おっぱいで、賢者の腕を挟み込んでいる。


 賢者は離れようとするが、聖女は放そうとはしない。

 だんだんと賢者は聖女によって壁際に追い詰められた。


 それを、ニヤニヤと見ていた魔王。

 聖女の魂胆なぞ、お見通しである。

 あわよくば、賢者を篭絡して聖王国に連れていくつもりであろう。

 黙って、見過ごすつもりはなかった。


 魔王もソファから立ち上がり、ゆっくりと賢者の側にやって来た。


 賢者は、魔王に向かってアイコンタクトで”助けてください”と必死で訴えている。


 賢者は、転生者。だが、転生前もずっと男子校で女性の縁のない職場だった。

 転生前も含めて、彼女がいたことが無い。もちろん、転生前も転生後も童貞。

 こういうことに、全く免疫が無いのだ。

 


 その表情を見た魔王。いたずらっ子のように、ニヤッと口角を上げた。

 賢者のすぐそばに立つ。


「そういえば、わしも以前から気になってたことがあるのじゃが」

「え・・?」

「おぬしの聖剣で、わしの体を貫かれたらどうなるか・・・一度試してみたくての・・」

「え?そんなことしたら魔王様が死んじゃう・・」

「あんな、鋤になったなまくらのことではない」


 そう言うと、魔王は賢者の両足の間に膝を差し込んで来た。

 腰と腰が密着する。


 そして、左手でさわさわと賢者の股間を撫で上げた。


「おぬしの、この立派なでわしの体を貫いたら・・どうなるかのう・・・?」

 賢者の耳元でささやく。


「ま・・・魔王様!?」

 魔王は、ペロッ・・と唇をなめた。

 真っ赤な唇が、ヌメヌメと光っている。


 エロい。物凄くエロい。


 魔王は右手で賢者の腰を抱き、さらに腰を密着させる。

 小柄な賢者は、魔王の胸のあたりで上目遣いで見上げてくる。


 童顔な少年が涙目でウルウルと、頬を赤らめて・・


 おおふ!


 魔王は、その賢者の表情を見ると嗜虐心が刺激された。

 ううむ、もっといじめたい・・・

 賢者の表情が、魔王のサディズムな性癖を刺激してくる。


 魔王は、衝動をこらえられなくなってきた。


 それを見た聖女。

 自分も負けじと賢者に抱き着き、さらに密着してくる。


 賢者の耳元でささやく。

「私の勇者様♡ 魔王なんかよりも処女の私の方がきっといいわよ」

「失敬な、わしも処女だぞ」

「うそぉ」


 壁際に追い詰められている賢者。

 聖女と魔王に密着され、真っ赤になって震えている。


 その賢者の耳元に、魔王が息を吹きかける。


「あぁ・・・・!」


「のう、賢者よ・・この隣の部屋は客間になっておってな・・・寝室となっておるのじゃ。そちらに一緒に行こうかの・・?」

「え?」

「勇者様。それならば私と一緒に行きましょうよ。

 私・・勇者様になら、何されても良いわ♡」

「え?・・・え・・・」

 

 お願い、助けて!

『・・・・・・』



 魔王は、賢者の股間をまさぐりながら・・

「ほお・・思った以上に立派な聖剣じゃ・・・

 これが、わしの中に入ったらどうなるのかの・・・?」

「え・・・え・・・」

「勇者様・・私の純潔を勇者様に捧げますわ・・・」

「え・・・・」

「さぁ。行こうかの・・」

「いえ、私と・・行きましょ?」


「え・・・え・・・


  エクスプロ―ジョン!!」



 どおぉーーーーーん!!




 派手な爆発が起こり、壁が吹っ飛んだ。

 もうもうと土煙が充満する。


 魔王城は、魔法無効化の結界を強力にかけられている。

 本来なら、魔法は使えないはず。


 だが、その強力な結界の中でも魔法を発動する賢者はさすがと言えよう。


 壁に開いた穴から外が見える。

 そこから吹きこんできた風によって土煙が吹き流された後には賢者がいなくなっていた。


 慌ててやってくる、近衛兵たち。

「魔王様!!無事ですか!!」

 将軍たちも駆け込んでくる。


 魔王が、ニヤニヤと笑いながらつぶやいた。

「いたずらが過ぎたかのぉ・・?」


 だが、聖女はあきらめていなかった。

「追いかけなきゃ!」

 そう叫ぶと、走って出て行った。

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