幕間 魔法使いによる調査 追加報告

 聖女が王座に就き、王国・・・改め、聖王国に平和が訪れた。

 魔法使いは、聖王国の魔法研究所の所長と言うポストが与えられ、重用されている。


 ふと、魔法使いは前国王の悪事の報告書のその後の顛末をまとめておこうと思い立った。単に個人的興味からである。


 そこで、追加調査を行うことにした。


【他国に売却された国宝】

 聖女様の外交手腕によって、徐々に買戻しが進んでいる。

 もちろん、一部の国宝は行方知れずにはなっている。


 買い戻すための資金は、魔王領からの融資などを原資としている。

 もちろん借金ではあるが、金利は良心的だ。

「観光収入が入るようになったからのぉ。持ちつ持たれつじゃ!」

 と魔王は気前が良い。


 勇者の鎧と盾を買い戻すことも検討しているが、肝心の勇者が

”え?いらないですよ?”

 と言っている。

 魔王と戦う必要もないため。、優先順位を下げている。


【他国との関係】

 聖女様が国王についてから、他国との外交はかなり良好である。

 

 というか、聖女様目当てに頻繁に海外からの国賓が来るようになった。

 バックに魔王がついているから、下手なことはしてこない。


 かなりの好条件での経済協力や、同盟関係を結ぶことができている。


【内政】

 伯爵様が、聖女様を強力に支持している。


 また、各貴族たちは聖女様への支持を表明している。

 国民からの圧倒的な人気を考えれば妥当である。


 ただ、伯爵さまが張り切っている。

 聖女様を立派な国王にすると、教育係を買って出たのだ。

 

 立ち振る舞いから、精神論や君主論まで。

 ほぼ、毎日スパルタ教育を施している。


 聖女様は、無言で私に”助けてちょうだい”と涙目で見つめてくる。

 すみません。私には何もできません。



【その他】

 イガの国の男爵は失脚し、暗殺部隊は解散した。

 もはや、聖王国では暗殺などを恐れる必要はなくなったと思われる。



――――


 怪しい。



 魔法使いは、聖王国の会計情報を精査しているうちに。ある程度の使途不明金があることに気が付いた。予算は、聖女様のお小遣いからである。

 しかしながら、支払先が不明なのだ。



 念のために、その支払先を秘密裏に調査した。

 すると・・・



 なんと、イガの里に資金として流れていることが分かった。

 もちろん、高額ではないのだが。

 どうやら聖女様がイガの間者に個人的に何かを依頼しているようである。

 定期的に、何らかの報告が聖女の元に届けられているようである。


 いったい、何を依頼しているのか。

 聖女様に限って、暗殺などではないと思いたい。


 だが不安に思った魔法使いは、聖女様が業務中に私室に忍び込んだ。


 テーブルの中。本棚。

 鍵を解除の呪文で開けて調べたが、何も出てこない。

 他に、隠せるところと言えば・・・


 念のためと思って、クローゼットを開けた。


 その中を見て、目が点になり絶句した。

 そして、ゆっくりとクローゼットを閉めた。






 クローゼットの中には、ある少年賢者様の日々の生活を隠し撮りしたと思われる写真がびっしりと貼られていた。

 

 

 



 どうしよう

 聖女様が、ストーカーになっちゃった。

 そうだ、見なかったにしよう。





◇◇◇◇◇◇◇◇

 (作者注)

 この話を公開するかどうか悩んだのですが、これが無いと第4部と第6部で話がつながらない部分が出るため公開しました。

 

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