第2部 エピローグ

「聖女様、午後のご予定ですが、13時よりA国の大使との面会。13:30よりC国大使との面会。14:00より市民団体からの陳情。15:00から伯爵さまとの面会。16:00からイバーラギからの面会。16:30から・・・」


「もう!!なんでこんなに忙しいのよ!!」


 以前より忙しい毎日。

 聖女は、恒例のように叫んで駄々をこねた。


「こんなの、前よりブラックな職場じゃないの!?

 いったいだれが責任者よ!!」


 秘書および側近の物は無言である。

 だが、内心ではつっ込みたくて仕方がなかった

”それは、あなたです”


 そう、聖王国のTOPは聖女様である。

 つまりは、全ての責任はTOPである聖女様の責任。


 聖女様も、それは分かっている。

 だが、やはり一日に2~3度ヒステリーを起こす。


「もう! こんな職場いや~~!!」






「いやあ、こんなに儲かるとは思ってなかったのじゃ。笑いが止まらんのう」

 ほくほく顔の魔王。


 聖王国を同盟を結び、正式に国交を開いた。


 すると、観光客が押し寄せてきた。

 そして、収入がうなぎ上り。


「さあて、これから忙しいぞ!冬に向けてスキー場の整備を急がなきゃならないし、賢者の提案したジンギスカンを普及しないといけない。あっはっは」


 魔王は、うれしくてうれしくて仕方がない。

 こんなに儲かるなら、早く国交を開けばよかった。


 忙しいながらも、うれしい悲鳴である。





「将軍様、お茶はいかがでしょうか? 一緒に、ナガーノのリンゴで作ったアップルパイも」

「うむ、いただこう。一緒にどうだ?」

「いいのですか?」

「もちろんだとも」


 函館のゴリョーカク。

 将軍と賢者は一緒にお茶をしていた。


「平和になりましたね」

「そうだな・・・武人としては微妙だが、これはこれでいいものだ」


 聖剣エクスカリバーは、魔王城の宝物庫の奥深くに封印した。

 何かわめいていたが、気にする必要はない。


 聖王国とは同盟関係。民衆を含めて、交流が進んでいる。

 そういう意味で、ゴリョーカクの存在意義は微妙なのだろう。


 それでも、将軍様と一緒のお茶をゆっくりできる。

 それはとても、幸せな時間。

 

 これこそ、望んでいたスローライフ。

 もう逃げ回る必要は無いのだ。







『それは、間違いなくフラグです』


 え?












 聖王国の王城。

 そこに飾られた、聖女の戴冠式の絵画。

 たまに真夜中に、聖女はその前に来る。

 



 王冠を伯爵が掲げて、聖女に戴冠するその瞬間を描いている。


 そこに描かれているのは、聖女を中心に伯爵や各貴族たち。

 魔法使いや、魔王や将軍も描かれている。


 そして、隅に質素な服装の小柄な少年の姿。


 それを見つめて、小さく・・誰にも聞こえない声で聖女はつぶやく。

「私の・・・・・勇者様♡」






――――

作者注:

 函館 は誤字ではありません。

 第4部に向けた伏線となりますので、ご容赦ください。

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