第1部 エピローグ

「聖女様バンザーイ!!」

「聖女様〜!!」


 王都に向かう

 熱狂している大勢の群衆。


 聖女は、群衆に大きく手を振りながら涙を流していた。

 手を降るたびに、胸も大きくブンブンと揺れている。


”良かった・・・これなら、国王も認めてくれるかもしれない・・・”




 聖女はハコダテの港から船に乗るとき、将軍から手紙を渡された。

「これ、賢者から預かった」

「何かしら。ラブレター・・・?」

「よし、燃やそう」

「あ〜〜〜待って!! 待って!!」


 そこに書かれていた文章は、ラブレターではなかった。


  ”王都に戻る前にサイの国を領地とする伯爵を頼ったら良いですよ”




「伯爵様かぁ・・・」

 サイの国の伯爵は、とても信心深い人物であった。


”あの人、私のことをまるで天女のように崇拝してくるから苦手なのよね・・・”


 それでも、背に腹は変えられなかった。

 アオーモリで魔法使いと合流した聖女。

 なんとかサイの国までたどり着いた。伯爵を訪ね、事の次第を説明する。


「おぉ、さすがは聖女様です。たったお一人で魔法城に行き、魔王を屈服させてくるとは。まさに女神様の生まれ変わりではないでしょうか!」


 伯爵は涙を流しながら感激した。

 抱きしめてくるかと思うくらいにすり寄ってきて、聖女の手を取りほおずりをする。


「これは、王国の民にも聖女様の偉業を知らしめなければなりません!」


 伯爵は、サイの国から王城まで、凱旋パレードを手配し民衆に宣伝した。


 民衆は、その知らせを聞きとても喜んだ。

 戦争は無くなったことを安堵し、これで少しは税金が下がるかもしれないと期待したのだ。


 そして、それを成し遂げたのがただ一人の美しい女性だということ。

 デブの国王より、よっぽど頼りになりそうだ。

 王国の民衆は、聖女様をまるでアイドルを迎えるように熱狂したのである。


 カリスマの誕生である。


 パレードは進んでいく。

 どこまでも続く民衆の波。

 聖女は、手を振りながら熱狂にのぼせたように頬を紅潮させるのであった。

 

----


「さて、もうそろそろ収穫だな」

 賢者は畑仕事をひと段落して、あたりを見回した。


 魔王城の裏手に作られたひろびろとした畑。


 カボチャとジャガイモがすくすくと育っている。

 玉ねぎも植えている。

 今度、トマトの苗を調達してビニルハウスを作って育ててみよう。

 あと、ユーバリに行ってメロン栽培を見てみたいな。


 のんびりとした生活。

 周りの人たちも、いい人ばかりだ。


 その日の夕食は、シチューにした。

 みんなとても喜んでくれた。


「ふう、食べた食べた。お腹いっぱいだ」

 魔王様も将軍様も満足したらしい。


「そうですか。食後のデザートに、カボチャプリンを用意しましたが、食べられますか?」


「「食べます!」」


 一斉に挙がる手。


 魔王様や将軍様だけでなく、扉のところに控えている部下や給仕のメイドまで手を挙げている。


 僕は笑って答えた。

「はい、全員分ご用意しますよ」


 畑でたくさんの野菜を作ることができる。

 その野菜を使った料理を、喜んで食べてくれる人たちがいる。


 ここでなら、いつでも笑顔でいられる。


 賢者は逃亡の果てに、理想の場所を手に入れることができたのだ。



(完)







『第1部が終わってだけで、すぐに第2部が始まります』


 え?そうなの?

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