第二十話 学校と教室とクラスメイト 5
アリアちゃんが僕に女教師風の格好を見せるためくるりと回る。その恰好は僕と同じような年齢の見た目だから少しあってないけれど、見た目の良さがそれを全部力業で超えて似合って見えた。
「う、うん。よく似合ってるよ」
「ふふん、だろう? ウルリーカがね、学校ならこの格好だと本の挿絵で教えてくれたんだよ。なぜか一緒に書いてあった男子生徒は半分脱いでたけどね。マーマルズ国とドワーフ国に行った時に作ってもらったんだよ」
くいっくいっと赤眼鏡を上げる素振りするアリアちゃんをよそ目に、ウルリーカさんを見ると笑顔のままサッと目をそらされた。
なんの本見せてるんだよって、なんかこんなやり取り村でもレナエルちゃんとやったな。
そういやウルリーカさんなんでここにいるんだろう、それをアリアちゃんに聞いてみた。
「僕が連れてきたんだ。ウルリーカも成長したからね、僕が連れさえすればここに繋がる樹脈だけなら転移が出来る様になったのさ」
「転移出来るのはすごいけど、そうじゃなくってどうやってじゃなくて何で連れてきたの?」
「そりゃ、僕がヒューマンの時間になれるためさ、ウルリーカが暫くは一緒にいて教えてくれるってさ。あと、僕が余計なことを言わないためだね!」
僕とアリアちゃんが話している間もなんか話は進んでいたみたいだった。
「辺境伯殿、この場で発言したということは」
「そうです殿下。ほとんど正式に認めたと同意になりますな」
「アリア殿が後見人になるということは彼の立場は相当難しいものになるよねぇ」
「そうですな、ですので私と王のみが持つ権利を行使させていただこうと思っております」
アリアちゃんが話しかけてくるので、おじいちゃんの話はあまり聞けてないけど、なにやらファニオさんと話していたおじいちゃんが僕を見た感じがしたのでそちらを見ると、僕とアリアちゃんをちらりと見た後、ファニオさんに目線を戻した。
「……国王様と辺境伯殿の権利、アレかぁ……まあ僕なんかが、口を出す資格とかはないんだけどね。まあ一応賛成しとくよ」
「兄様が賛成ならば私も賛成ですわ」
「感謝いたします。最後が少し助長的になってしまったが、これにてこの者の紹介を終わらせていただく」
あれ? 終わった? 途中僕の紹介じゃなく、なんか変な話になっていたけど何だったんだろう?
首を傾げながら僕は自分の席に戻った。
「最後に私から頼みがある。我々ヒューマンで言う『恩恵』『制限解除』の事だが、各種族それぞれ呼び名があるとは知っているがそれをこの学校に限り統一させて頂く」
おじいちゃんがその発言をした途端、僕達ヒューマン以外の種族の人からピリピリとした圧力を感じた。
「落ち着いてほしい。我らの言葉に合わせろというものではない。それぞれの大陸にもある冒険者協会が使う『ギフト』『スキル』という名称を便宜上使っていくと言うことだ。──今年開いた我が校は殆どがヒューマンだ。だが私はこの学校、この街では別け隔てなく多くの他種族を受け入れたいと思っている。諸君らが集まったこの特別な科にも我らヒューマンが名付けることはなく、他種族を尊重するため特定の名前などは付けないという慣習に従い、ただ『クラス』とだけ呼ばせてもらう」
この世界は名前はとても大事らしく名称で揉める場合も多々あるので、他種族や思想の違いなどを尊重する場合、そこの場所を表す名前を使うらしい。
この科の名前を今まで教えてくれなかったのは、そもそも名前なんかなかったからなのか。
「納得は……していただけたみたいだな。では、始業時には必ずここにいるようお願いする。アリア殿が気が向いた時に特別授業として行うが、その授業がない時は各々方が得意魔法を見せ、解説をするという事を約束してもらっているが、まずは明日、戦陣を切って私が得意とする魔術の数々を見せようと思う」
僕、生活魔法しか使えないんだけど、そりゃちょっとは得意なのかな? って思っては入るけれど誰でも使えるからなぁ。なんか、他の人は二つ名まである人達なのに生活魔法なんか見せたってしょうがない気がするんだけど。
「気が向いたときとはひどいなぁ。僕に聞きたいことがあってそれが面白いことなら、ちゃんとヒントを上げるよ」
アリアちゃんはおじいちゃんの台詞が気になったようで訂正してたけれど、それは気が向いた時にやるのとどう違うのかな? それと答えじゃなくヒントなんだね。
「それは失礼しました。アリア殿に聞きたいことがあれば遠慮なく聞いてもいいということでよろしいですかな?」
「うん、例えそれがくだらないことでも気にせず聞いていいよ。でも、僕は興味の無い事には何も出来ないからね。それだけは理解してほしいかな?」
「もちろん、我々も分かっております」
いや、僕は分かってないんだけど。でも、するしないじゃなくて出来ないなんだ。
「そして、それらが終われば自習するなり、他の授業に出るなり、帰るなり好きにして結構だ。ただ、それぞれの事情もある。御自分の魔力に恥じぬようにしていただきたい」
皆が頷いたのを確認すると、おじいちゃんも納得したように頷いた。
「では、今日はこれで解散とする」
うん、今日の出来事が終わってやっぱり思ったことがある。僕がこのクラスにいるの場違いすぎるんだけど‼
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます