第三話 失敗と進化と謎

 「今日のお風呂は失敗だったなぁ」


 昨日の練習でとりあえず骨人間の操作がある程度まで出来たので、戦闘シーンがない花を咲かせるおじいさんの話を骨人間でやったんだけど。妹を怖がらせて泣かせてしまった。


 どうも人に近い棒の組み合わせというのがだめだったみたい、さらにそれがリアルに動くものだからなおさらみたいだった。

 特に犬が怖かったみたいだ。

 怖いものを見せて仕方ないので人形劇はやめてその物語の童謡に切り替えて一緒に歌ったらどうにか泣き止んで機嫌を直してくれた。


 今回、技術力が上がったからってそれを自慢気に見せてすごいだろっていう気持ちが先行してたような気もする。

 作り手側の自己満足じゃなくて見る側を楽しませるという、いちばん大事なことが抜けちゃっていた。

 これからも自然に動かす練習は続けていかないといけないけど、あくまでそれはエンターテインメントに落とし込むため、技術を上げて受け入れられないなら、それをわざと下げてでも受け入れやすくしないといけない。


 あくまでも面白くてすごいのを見せたいのであって、すごいだけじゃだめなんだ。

 今回の失敗を教訓に精進あるのみ。

 そもそも犬は骨人間っておかしいし。骨人間の響きも怖いな。


「うーん、とりあえず3Dモデルの名称にもある、ボーンって言っておこう」


 ──3Dモデルか、自分の口から出た言葉にゲームのブレイクスルーを起こした一つ、ポリゴンの格闘ゲームを思い出した。

 実際はやったことないがゲームの歴史みたいな動画で見た覚えがある。

 ふと思いついたので片腕だけボーンを表示させる。

 

「これを基準に薄い四角の板を何枚もつければ初期のポリゴンモデルくらいにはいけるんじゃないか? 」


 指は複雑になるので関節を減らし単純にして、腕の周りに板を貼り付けるように水魔法で作っていった。

 出来上がったのはなんとか腕に見えるようなもので、ポリゴンモデルというよりも最初期のロボットのプラモみたいだ。

 

 少し動かしてみたが作る前から思ってたとおりだめだった。

 動かすたび板で構成された部分がずれたり遅れたりする。

 これまでもだが棒人間もパーツ1つずつを制御して人のように見せかけてただけで実は全部バラバラのままだった。


 棒人間で前進するとして腕を振り足を上げて進むこの際パーツを僕が全部前に動かしてるから歩いてるように見えるだけで、例えば頭の一つ制御を忘れればその場に頭が取り残されてそれ以外が前進する。

 操り人形のような感じだ。しかもパーツがつながっておらず、1パーツ1パーツごとに糸でぶら下げて操っていると思ってくれればいい。


 最初の人形劇の時は脳が焼けそうになってたのはこの制御を大量にやったのが原因だと思う。


 僕自身でもちょっと頭がおかしくなりそうな制御の仕方してるなとは思うんだけど、それしか出来なかったしこの体の脳みそが優秀なのか、やればやるほど出来てくるから結構ゴリ押しで処理してるんだよね。


 一体全部をパーツとして制御できるように成れればだいぶ楽になるんだけど、そうしたら棒人間の制御も減らせるし、四角を組み合わせてドットのキャラみたいに出来て動かせる様になるんだけどなぁ。

 そう考えながら水魔法ブロックで有名な赤い帽子の配管工を作り上げた。

 

 見た目はそのまんまなんだけど、動かすとブロック数が多いからか動かすたびに先程のポリゴンモデルと同じく、ずれたり隙間ができる。

 パーツを作り上げて組み合わせたあと魔力をなじませて一体化って前は考えてたけど出来なかったんだよね。


「はぁ!!全魔力使って一体化だ!──なんてね、そんな簡単にできたらいいんだ……けど……え?」


 パーツごとにバラバラだったドットの魔力一つ一つが、馴染んで一つの魔力になっていた。


「あれ?うそ?できてる!なんで?」


 全魔力と言ったけど魔力なんて殆ど使ってないそうしたいと思っただけだ、なのに今回は前とは違いスルッと行けた。

 前は何をしても【何か】が邪魔して通る気配が微塵もなかったのだけど。

 信じられなくて棒人間を作って同じように一体化させてみたらやはりできる。

 そして、棒人間を歩かせると制御が比べ物にならないくらい楽になっているのが分かる。一つ一つそう見えるようにと制御していたものが歩くというイメージだけでそれよりも綺麗に簡単に制御ができる。


 できるようになった原因はなんだろう。

赤ちゃんの頃からの魔力励起と循環はやっていて魔力量と質を高めることは少しずつだけどできてると思う。

 それでも前はまるで動かない隙間のない壁にぶち当たってる感じしかしなかった【何か】を感じ、量や質じゃどうしようもないという確信があった。

 

 なんの根拠もなく、前世の記憶から考えてみたのは、

 一つ、レベルがあり上げればできる。

 一つ、魔法には熟練度があって使い続ければできるようになる。

 一つ、スキルが芽生えてできるようになった。

 もし存在するのであればだがスキルか熟練度が増えたからできるようになったとか、実は魔法使い続ければレベルが上がるとか。

 

「ああ、くそっ。これじゃ何もわからないのと一緒じゃないか」


 そう言えば僕この世界のこと村の中以外は殆ど知らない。

 知る方法がなかったと言ってもいいけど。


 幼児の頃をすぎるとすぐに村の手伝いをしないといけなかった。

 うまく魔力が使えない子供は基本的に作物運びだ。そこで自己強化を少しずつ教わる。 


 慣れない仕事ということでもあったけど、最初は体を動かして働け、体力が尽きたら魔力を使って動けと言われてたから、すぐに限界が来るから無理にご飯を詰めて寝ていた。

 休息日はレナエルちゃんたちと遊んだりしてたけど。

 それ以外はほぼこれの繰り返しで四~九歳は過ぎていった、自己強化を身につけるのにはこれが一番ということらしいが、いくら大人が見ていると言っても一桁の子供に無理させすぎだと思う。


 それで十歳になる頃プチっと来て風呂を作り上げて今になる。

 それまでは自分のことだけでせいいっぱいだったな。父も母も愛してくれるのはわかってるけど、理由は知らないけれど追われるように開拓作業やってたからどこかピリピリしていた。


 最近はホント穏やかになってきた。お風呂と妹のおかげだと僕は思う。

 知識については神父様なら色々知っていそうだし今度説法だけじゃなく直接聞いてみよう。今までは、変なことを言って僕の秘密がバレても嫌だったから避けていたけれども、魔法の常識くらいはちゃんと聞いておきたい。



 今回謎的に魔法が進化? したけれど使えるものは使うとしよう。

 新しいアイデアが浮かんできたから作り上げてアリーチェに今度こそ喜んでもらうぞ。

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