告白されたら

バブみ道日丿宮組

お題:危ない動揺 制限時間:15分


告白されたら

 危機的状況に置かれると、判断力が鈍る。

「どういうこと?」

 こと、愛の告白ともなれば、なにをもって是とするのか判断に困ってしまう。

「あなたが……好き」

 抱きついて、愛の言葉を告げてくるのは、同じ学年の女子。上の方のグループに属してる子だ。

「おかしくない?」

「おかしくないです」

 何度も交わした言葉だ。

 すりすりと顔を胸の中で動かす彼女はとても愛くるしい小動物のように思える……が。

 そもそも住んでる場所がおかしいのだ。

 僕はいわば最下層に位置する、一人族だ。誰にも話しかけられることもなく、誰のグループに入れられることもなく、孤独であり続けた。

「わたしずっとあなたを見てきました。とってもいい人です。だから、わたしの恋人になってください」

 ほんのりと赤く頬を染める彼女はとても魅力的だ。これで断る男子はいないであろう。想いが先行しすぎて手を出してしまう可能性すらある魅惑の果実。

 だが、

「僕、女子だけどいいの?」

 そもそもその断われる男子ですらなかった。

 生まれてこの方、十数年。女子として生きてきた人間であった。

「だから、いいの。男子は汚いから、可愛い女の子がいい」

「か、可愛い……」

 男子が綺麗か汚いかは僕には判断はつかないが、可愛い僕というのはもっと判断がつかなかった。

 誰よりも小さく、誰よりも成長してない胸。あるとすれば、人よりも少し成績が高いということだけであって、女子に違いはない。

 もっとも抱きついてきてる女子も小さい。胸は僕よりも大きいけど。

「君なら、もっといい女子がいない? 例えば……」

 浮かんでこなかった。名前を覚えてないこともあるが、誰かに抱きつかれてるという状況がより一層思考を妨げた。

「ううん。あなた以上の人はいないの。わたし、あなたがいいの。おかしいかな? 女の子が女の子を好きになっちゃ?」

「……えっと」

 わからない。好きって感情は異性であろうと、同性であろうと変わらない。家族愛であったり、友情愛であったり、見えない好きは多いのだ。

「……お友達からでいいのなら」

 何度が生まれた想いをやっとのことで僕は口にした。

「ありがとう!」

 告白を受けてからもしばらく彼女は僕を抱きしめたままであった。

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告白されたら バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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