ヒーロー

バブみ道日丿宮組

お題:ラストは電車 制限時間:15分


ヒーロー

「今のヒーローは電車に乗ってくるんだね」

 テレビでは全身赤のヒーローが電車の改札口をくぐってた。

「バイクはコストがかかるからね」

「とはいっても、最寄り駅にはいけたとして現場には直接いけないよね? というか、これ駅員さん不審者として止めないの?」

 電車を待つ全身赤の人間はとても異質だ。普段見慣れないこともあるが、赤という刺激色に人は視線を集めるものだろう。だが、テレビの中では視線を向ける人はいない。

 誰しもがそれが当然かのようにスルーしてる。いわば、生活の一部だと言わんとしてる。

「最寄り駅からは超強力になった肉体で飛んでくから平気平気。あと基本的には今の社会でも仮装してても何も声がかけられないよ。あるとしたら、不審な動きを見せてる人かな? どうどうとしてれば、普段着なのかと思われるみたい。うーん、駅からどうやって現場にきたかの描写は基本ないから、具体的にどうこうしてやってきたのかどうかはわからないよ」

 その言葉どおりに電車に乗ったヒーローは悪である怪人の目の前へとシュタッと降り立った。

「それはそれでどうなの……?」

 戦い始める正義と悪は、そんな言葉はおかいまいなしに格闘しだす。

「細かいことはナッシングだよ。ヒーローは社会のルールはお構いなしに悪を倒すものだから!」

「さすがにルール守ってないヒーローを公共の放送で流すのはいけないと思う」

 パンチ、キック、剣を使って悪と戦う姿には悪そうな色は見えない。悪もそれほど悪とは見えない。ただ冒頭にあった犯罪行為だけがカレの背景として存在してる。

「大丈夫。そこらへんは映ってないから! なにか悪いことをしてても、基本スルーだから!」

 悪は悪をしてることあるが、ヒーローが悪となることはほとんどない。例外と言えるものは存在してるが、二人が見てるヒーローはそんなことはしない。

「そんな世界観たくないってのはあるけれど、ヒーローの一日? ってのは見てみたい気がするな。あこがれの人はいったい何をして過ごすのか。そういうのに近いと思うんだよね」

「わからなくもないかな。ただ日常生活映っても面白くはなさそうかな。戦ってこそのヒーローだからね! 悪をビシッと倒すのがいいところだから!」

「確かに」

 ずずずっとお茶を口に運び、二人はヒーローを鑑賞し続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヒーロー バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る