関係

バブみ道日丿宮組

お題:鈍い曲 制限時間:15分


関係

「随分と昔の曲を口ずさむものだね」

「10年前ってそんな昔の表現使うものだっけ?」

「僕らがまだ5歳にも満たないときなのだから、大昔といってもいいだろう」

「それだったら、音楽の教科書とかに載ってたりしないかな? 30年前くらいの名曲は結構合唱曲になってたりするよ。みんなのうたとかで」

「それがバラードであったりすればそうかもしれないが、ロックだからね。とてもじゃないが音楽の教科書に載ることはないだろう」

「難しいものだね。カラオケだったら、○○年の名曲としてランクインしてるっていうのにさ」

「名曲であっても、歴史ある曲として認定されるにはそれなりのものが必要ってことさ」

「うーん、なんだろう。素晴らしい曲を埋めてしまうのはもったいない気がする」

「使われることはあるから完全に消失してるってわけじゃないさ。例えば、文化祭のテーマ曲であったり、体育祭での応援歌であったりと、使われるところはあるさ。君がつぶやいた曲はよくデパートでクラシックバージョンが流れてるよ」

「へー、そうなんだ。あまりデパートなんて行かないから初耳だよ」

「母の見舞い品をよく買いに行くからね」

「そっか。お母さん調子いい?」

「どうだろうか。目を開けてることのが少ないからね。娘であっても会話をする機会は少ないよ。見舞い品が切れてたりするのを見れば、生きてるんだという実感はあるのだけどね」

「いつか退院できればいいね」

「原因不明の病気だからね。根本的な解決はできない」

「そっか。じゃぁ私が側にいてあげるからね。寂しくなんてさせないよ」

「君の熱意が高すぎるのはさておき、家のことをしてくれるのには感謝しかないよ」

「片付けるのも掃除するのも料理するのもてんで駄目っていうなら、入るしかないでしょ」

「勉強ならできるんだけどね」

「そうだね。学校一の頭脳って言われてるものね」

「そんな称号みたいなのはいらない。僕は母を治すための手段を得るためにやってるだけだ。君が歌を口ずさむようにね」

「そうそう。コンクール一次試験通ったんだよ」

「おめでとう。夢にまた1つ進んだね」

「当選してもあなたの身の回りはちゃんとするからね」

「そこらへんに気を使うことはないよ。お金で家政婦を雇うこともできるんだ」

「ううん、やらせてほしいの。誰もいない家はとても悲しいことだから」

「……わかった。じゃぁ、もっと歌を口ずさんでくれ。脳のリフレッシュをしたい」

「うん、いいよ」

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