第7話

光季からの返事は次のようであった。「我が、家の子・郎党らもみな口々におまえの言うように詮議しておる。都を落ちようと思う者たちには、恨みもない、さっさと落ちよ。留まりたいものは、留まれ。そう告げて、各自の好きなようにさせた。

落ちようとも、すでに関所も設けられたかもしれぬ。なまじ落人おちゅうどとなって生け捕られるは末代までの恥辱である。弓矢取る者の家に生まれ、板東に武者あまたある中から、大夫殿に信任され、鎌倉の代官となり、未だその任務を解かれてはおらぬ。この王城、花の都で、かたじけなくも十善の帝王に討たれるは面目である。私はここを一歩も引かぬ」と。

光季はその十四になる息子寿王じゅおうらとともに屋敷に立て籠もった。


翌日、光季らは討ち死にした。「あっぱれ光季。君も臣も、昔も今も光季ほどの者こそありがたけれ」とみなが褒めた。

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