第6話

やがて御所から光季のもとへやった使者が帰参して光季の返答を伝えた。「従来、帝が都で武士を召集するには鎌倉の代官である私をまずお召しになるはず。こたびの仕儀、はなはだ不審である。帝おん自らの御処断とも思われぬ。大夫殿の指示を仰いでのち、参内いたしましょう、今しばらくお待ち願いたい。」

胤義は言い放った。「光季が義時の一味であることは明白。彼は時間稼ぎをしておるのです。ただちに光季を誅しましょう。」

「おそれながら、」親広が発言する。「光季は自らに与えられた責務を忠実に、愚直に、遂行しようとしているだけです。院に対し奉り、決して二心はありません。義時に仕えるのと同じ真心で、院にもお仕えする者です。私が保証します。」

「しかし、勅が下っておるのに参院せぬのは、明白な謀反である。」

「参院せぬとは言っておりません。鎌倉の判断を待ちたい、そう言っているだけではありませんか。」

親広の抗弁もむなしく、衆議も光季誅伐やむなしと判断する。

親広は光季へ密かに使いをやった。「我ら守護が取り次がぬのに、鎌倉武士に院宣が下ったのであるから、もはや我らは守護でもなんでもない。無勢にて多勢にはかないがたい。お役目で上洛し守護となったのであるから、私的な遺恨もない。帝を敵に回して朝敵となってはならない。夜のうちに京を紛れ出て、鎌倉へ落ち延びなさい」と。

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