第8話

親広は体中の血が煮え立つ思いであった。全身を汗で濡らした。鎌倉武士として立派に節を全うして死んだ光季をうらやみ、自らをじた。

親広は大江広元の長男、広元はもと京都の素性も知れぬ公家。鎌倉に下向して頼朝の右筆ゆうひつとなり、政所まんどころの立ち上げに功績があった。文官である。方や伊賀氏、もとはと言えば関東の名も無い野人、頼朝の挙兵に乗じて崛起くっきし、頼朝に取り立てられて頭角を現した武家の一門である。同じ頼朝恩顧と言っても温度差がある。

「義父よ、私は王命にしたがいます。不孝をお許しください。」親広は妻竹殿を離縁し、誓書をしたためて官軍の一将に加わった。


終わり

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