高校2年生

09 相談

 5時間目が始まる20分前。芹那せりなを連れて3年生のフロアに向かった。


「芹那も居ていいの?」

「うん。そのうち芹那にも話そうと思ってたことだから。」

「何の話だろう。緊張するなぁ。」






 3年1組に到着し、約束の時間なのを確認して彩芽あやめさんを呼んだ。教室には扇風機が首を振って辺りを見渡していた。2年生の教室には置いていないのに。羨ましい。


「こんにちは。昨日言ってた話って何? もしかしてすみれのこと?」


内容には一切触れていなかったのに。彩芽さんにはお見通しだったようだ。


「はい、菫さんも関係してきます。」

「分かった。廊下だと周りがうるさいから、空き教室に行こう。」


その提案で場所を変えることにした。






 扉を閉めると、廊下のうるささが静寂に変わった。円になるように椅子を持ち寄って座る。押し寄せてくる緊張に負けないよう、大きく息を吸った。


「実は――。」


 おそらく私はバイセクシャルであり、菫さんを恋愛対象として見ていること。それは今回が初めてで、自分でもどうすればいいか戸惑い、悩んでいること。この場で最初に打ち明けたため、私がオープンにするまでは秘密にしてほしいこと。


 ひとつひとつ、頭にある言葉を探しながら話した。予想外だったらしい芹那は、口をポカンと開けていた。一方の彩芽さんは頷き、拳に顎を乗せて言った。


「まずは話してくれてありがとう。香澄かすみちゃんが菫のことを好きなら応援するし、力になるよ。えっと、菫はあんなだから……。沢山話しかけて距離を縮めたらいいと思う。」


以前から菫さん関連の話をしていたからか、反対することなく受け入れてくれた。その優しい言葉で、1人で抱えていた肩の荷を下ろすことができた。


「これからも彩芽さんを頼っていいですか?」

「もちろん。自分でよければ。」


軽くなった気持ちと共に、空き教室を後にした。






 芹那と2人っきりになると案の定、気まずく重たい空気が圧し掛かってきた。何か話した方がいいのだろうか。先に口を開いたのは芹那だった。


「突然のことでビックリしたけど……、話してくれて嬉しかったよ。ありがとう。香澄は香澄だから。これからは1人で抱え込まずに、芹那にも相談してね。」

「ありがとう。これからもよろしくね。」


無駄な心配はいらなかったようだ。最高の友達だ。この先、大きな喧嘩をして2人の関係にひびが入っても、芹那について行く。そう心に決めた。

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