08 バレンタインデー

 いつもの3人で仲良くお昼ご飯を食べていた。バレンタインでも変わることのない日常。そんなはずだった。






 同じクラスの女子サッカー部の子に「香澄かすみ、呼んでるよ」と声をかけられた。あぁ、また生徒会か。「はーい」と返事をして廊下に向かった。意外にも、そこにいたのはすみれさんだった。


「昨日はありがとう。これ、お返し。」

「そんなそんな。こちらこそありがとうございます。」


突然の出来事で、これが精一杯だった。女子サッカー部の子が近くにいたため、話をせずに放心状態で2人のもとに帰った。


「香澄、おかえり。何だった?」

「もしかして菫さん? それ貰ったの?」


溢れ出る疑問を抑えられなかった芹那せりなが、私に問いかけた。


「そう、菫さんだったよ。お返し貰っちゃった。」

「よかったね。おめでとう。」






 家で開けようと思っていたが、誘惑に負けてしまった。5時間目が始まるまで、残り3分。


 高校生には手が届きにくい高級チョコが目に入った。そんな、私なんかに……。一緒に入っていた小さいメッセージカードを手に取る。昨日の返事が書かれていた。ちゃんと読んでくれたようだ。2、3回目を通し、傷を付けないようにそっと紙袋にしまった。


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