03 学校祭準備

 入学して2日で仲良くなった皐月さつきに連れられ、ダンスの練習をしている。ステージ発表の1つらしい。


 クラスごとに練習場所が割り当てられていて、幸運にも1年1組は玄関前だった。校舎の影で日は当たらないし、程よく風も吹く。6月下旬の暑さにはピッタリの場所だ。隣には最近話すようになった芹那せりなもいる。






 時間を忘れかけていた頃。ふと顔を上げると、時計の針が2時を示していた。


「あ、そろそろ教室に戻らないと。」


私の呟きを合図に、それぞれが片付けを始めた。






 しばらくして、クラスTシャツを着た先輩方が玄関に戻ってきた。もちろん、どこのクラスか分からない。それでも見覚えのある先輩がいた。私は無意識に手を止め、真っ直ぐに見つめていたらしい。


香澄かすみ? イケメンな先輩でもいた?」

すみれさんだ……。ほら、前に皐月に話してた先輩。後ろのほうにいて、セーター着てるの。」

「あ、あの人? こんなに暑いのにセーターだなんて不思議だね。」

「確かに、なんでだろう……。」

「ちょっとー。2人で話してないで、芹那も話に入れてよー。」


 久しぶりに菫さんを見れた嬉しさと、2人の友達に囲まれている幸せに、思わず顔が緩んだ。今日は良い日だ。もし菫さんと話す時が来たら、今日のことを聞いてみよう。そう心に誓った。

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