02 写真部
眩しい日差しがグラウンドに照り付けている。制服のジャケットを脱ぎ、ワイシャツの袖をまくった。至る所から汗が溢れ出てくる。これで6月なのか。
主人公の女の子が夏の思い出をカメラに収める、というドラマに憧れを抱いていた。確か、あれは小学校6年生の夏休みに放送していたドラマだ。
母にマネージャーは難しいと言われ、写真部に入部していたのだ。部活の写真を撮りに行けるのだから、怪しまれることなく『あの先輩』を眺められる。
なんと、今日が待ちに待ったサッカー部の練習風景を撮影できる日。黒く重たいカメラを首に掛け、お目当ての先輩を探す。
他の1年生は、私の知らない先輩の名前を次々に挙げていた。先輩との絡みがないので、どれが誰なのかさっぱり分からない。故に私からは、見たことがある、ぐらいの認知度である。
辺りを見渡すと、少し離れた所でペア練習をしている先輩が目に入った。『あの先輩』だった。
「ねぇ、『あの先輩』かっこよくない?」
「
まさか。名前を知っているなんて。もしかして知り合いなのか?
「同じ寮の先輩だよ。もしかして菫さん推し?」
質問する隙も無く返されてしまった。情報が多すぎる。とりあえず「うん」と答えた。
『あの先輩』は菫さんで、寮に住んでいるのか。ファインダー越しに菫さんの姿をとらえ、心の中でさっき知った名前を呼びながらシャッターを切った。
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