5. はたらく魔王さま!
いま我々が生きて暮らす社会を外からの目で捉え直すというのは、外国人のエッセイやテレビ番組でも人気の鉄板ネタですし、面白い保証があります。
それを異世界人でやってしまう発想力に物を言わせた作品……と簡単に片付けてしまうには、あまりにも惜しい作品です。
読みはじめると、この世界に早く戻りたいと感じてしまいます。すぐ隣にあってもおかしくなさそうなアットホームな世界なんですよね。
この作品の魅力が一体何なのか考えてみたのですが、やはりキャラクターの良さ、なんとも言えない『お茶の間感』でしょうか。
魔王と勇者なんて、今ではもう珍しくも何ともない設定なのに、本作のキャラクター達にはリアル感があって謎の親しみが湧く。彼らが日本で貧乏暮らしをするせいかもしれません。
『親しみが湧く』というのは『転生』という装置が持つ効果と同じですから、現代日本を舞台にファンタジー設定を持ち込むときは、庶民感覚を取り入れると良い……のでしょうか?
最後の決戦中ですら、お茶の間会話をしていて笑えたし、楽しかったです。たった一冊でキャラ達に愛着を沸かせる力がある作品でした。元気がない時に読むといいと思います。
文章は会話劇メインで、正直なところ、これまで読んだ中では一番怪しかったです(自分も出来てないくせに偉そうにすみません!)
アニメのノベライズ版だと思って読めば納得がいくと思います。
段落冒頭で突然会話が始まることが多く、主語が抜け落ちているせいで視点人物が分からず混乱することがあり、受動能動が気になる文もありました。情報として不必要な内容があるのも、気になる人は気になるでしょう。
しかし、それらの欠点すべてをテンポの良さがカバーしています。
冒頭の過去の説明だけは長文だったのですが、そこも普段の文章くらいの軽さなら読みやすかったのにと思います。他の悪魔の話は要らないんですよね。もしかすると伏線か? この推測が当たったかどうかは、読んで確かめてみてください。
アニメ二期もあるようなので、この機に一期を見てみようと思います。どちらかというと、脚本のお手本として読むのが正しい作品ではないかと思いました。
(2021.4.23読了)
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