第88話
ガックリ膝をつく。
「まあまあ、その様子じゃあ一回断れたって言うより自分だけ気分が上がっちゃって自爆したのかな?」
「な、ナンデそれを?」
「そりゃあ私だって昔は恋する乙女だったんだわ。それで恥ずかしすぎてお屋敷を全壊させた罪でここに送られたんだもの。」
あれ、私この話を知っている気がする。
王都で屋敷を買うか建てるか検討していた時にたまたま一等地で瓦礫が残った土地を見つけたことがあった。
それでこの土地が売れていないことを聞き何故なのか不思議に思い不動産に訪ねて見ると渋るような言い草で返答が帰ってきた。
「この土地、数十年前に魔呪術師が暴走してしまって建物が壊れたんですが強力過ぎる魔力のせいで一切魔術で干渉できないんですよ。それだけならまだよかったんですが、触れると身体がものすごく熱くなる呪いのせいがあったので肉体作業による瓦礫の撤去もできないので誰も買い手がつかんのです。」
私はその瓦礫の山を見た時何となく懐かしいようで新しいような感じがした。
試しに瓦礫に触れて見ると改めて懐かしさを感じた。
好きな人を勘違いされて暴露した乙女の恥ずかしいという感情は私がユートを好きなことバラされた気分だった。
「あなたが、魔呪術師だったんですね。」
「私が壊したものはどうだったかを知っているのなら大丈夫そうだね。」
「はい!先輩!」
「ああ、あとユート君はこの国の建国者の一人に成っていてね。今では3つの城を持っているんだけど畑仕事は欠かしていないから多分畑にいると思うよ。」
「はい、じゃあ行ってきます!」
「行ってらっしゃい。」
私はいつもユートの居た畑に向かっていった。
「なんだろうね。ユートらしいって言えばユートらしいんだけど畑ばっかりに行っていたユートがこんなにも立派な家を建ててるんだから不思議よね。」
畑だけではないがユートの美的センスは皆無に等しい。
おままごとで絵を描いたりするのだが壊滅的な絵しかかいていなかった。
それに畑の区画を作る時だって適当にしていた。
それが今はきっちりと区画分けされている都市を見るに相当勉強したのかと思った。
「しかしねえ、ここがこんなにも綺麗になるとは思わなかったよ。」
「そうねえ、村長が作った設計図なんてすごいぐちゃぐちゃだったのに一つ一つが実を結んでいくんだから。小さい頃絵が酷かったユート君もきちんと理解していたしね。」
「芸術家の言っていることは凡人には解らんらしいからその類じゃないかい?」
「そうさね。」
なんか、負けた気がしたから聞かなかったことにする。
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