第68話

な、なんなのよ!あの女!


ずっと思い続けてきた私を差し置いてユートは渡さないですって!


私の思いはそんなんじゃない!もっと誰よりもユートに見つめられたいと思っているのは私を除いて誰一人いないことを証明してやる!


ある種の我が儘


だが時に我が儘とは命を賭ける覚悟に成りえる。


絶対に好意を向けさせてみせたいという身勝手な我が儘が勇者としての本質を開花させた。


「ぜったいに!!!!!!私の方がユートにふさわしんだからぁ!!!!!!!」


乙女の絶対なる意思は聖剣を生んだ。

輝かしい光が彼女の周りに集まりだす。

そして剣、否武器を形作る。


彼女の思いによって鍛造された武器は手錠。


「絶対に逃さない!」


得物を確実に捉え監禁するために生まれた手錠は生き物のように増殖し鎖のように長くなった。


「邪魔者は!消えろ!!」


その鎖を持って目の前の敵を薙ぎ倒す。

勇者の名に似つかわしい暴君の如き所業は総大将が撤退を促していたにも関わらず味方を鼓舞させてしまった。


「勇者様に続け!」


「まて貴様ら撤退だ!」


「「「Ohoooooooooooo!!!」」」


もう鼓舞した兵を止める術はない。

総大将の気迫をもってしても勇者の鼓舞には叶わかった。


勇者と言う巨大な力と共にあるという集団的自意識が彼らを強者と勘違いさせてしまった。

これが集団心理の恐ろしさだ。

どんなに正しい考えを述べても集団の前には一切の無意味。

彼らは勇者を旗頭に自分たちの間違いに一切気づくことなく進軍していく。


「己の無知を知らぬとは怖いな。それにしても俺の幼馴染様は相変わらず目標を失ってしまっているようで何より。」


先ほど話したにも拘わらず、すぐに忘れるだけの鳥頭。

その癖付き合わせられるこっちの身になって欲しいものだ。


兵士たちがあの破天荒さについていけるのには感心だがあくまでも肉体のパフォーマンスは変わらないし高揚状態による疑似的な痛覚の枷を失ったに過ぎない。


その先にあるのは必ずしも勝利だけとは言えない。


「破滅への序章とでも表現するのが正しいのかね。まあいいやピグミー世界樹を殺りな。」


「わかったわユート。でもあの幼馴染ちゃんは猪突猛進であまりいい娘とは言えないわね。まあ、交友関係があの子しか居ないから無理もないでしょうけど。まあこれから交友関係も増えてくるでしょうし大人のであることが大半だからきちんと勉強はしておかないと後で痛い目を見るからきちんと勉強しておいた方が良いわよ。」


ピグミーが手を振りかざした瞬間。血の海へと変わった。

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