第61話

戦場に辿り着くや否や兵士たちにどちらの敵か解らなくなってしまったのでとりあえず幼馴染を探すことにした。


10年も経てば容姿なんて分からないと思っていた。

だがいつまでも構ってきた幼馴染のことだけは思い出せざる得なかった。


「全く、いつも目的に突っ走るのに最後の最後でその目的を忘れるんだから………。」


遊びの時もそうだった。

最初はおままごとをしようと言って無理やり遊ばせるのにおままごとの道具を砂で作っていっては本来の目的を忘れてお城遊びをしてしまうようなところが全く変わっていない。


今回もそれに気づいた時と似たような顔をしている。


そう何を目標にして良いか解らなくなってしまって泣いている幼馴染の姿が、

戦場で泣いているのではない。

心が泣きたがっている。


「いつもいつも開拓の邪魔してた割には自分を見失いガチなんだよ。」


誰よりも勇者に向いていない幼馴染が勇者になったことに疑問を持ってこそいた。

でも開拓をしなければならない。

だから俺は幼馴染についていくことは無かった。

親父が荒れているときに村長に育てられた俺は人の心がいつも変わることを知った。


だから幼馴染も勇者に成れるかもしれないと思った。

でも違った。

幼馴染は幼馴染のままだった。


これからも永遠に変わることが無いと確信できるくらいには信頼できる幼馴染、

兵士を斬ろうとする度に器にヒビが入り零れ落ちていく音が聞こえる。


もし俺にできることがあるとするのなら、

その器にコメのとぎ汁でも入れて器を修復してやるくらいだ。


もちろんそれで治るかどうかは解らない。


「いつも付き合わされてきたんだし一回くらい俺に付き合わせても大丈夫だろ。」


開拓は成功した。

当初全ての全行程は後90年後を見越して行われた開拓はモノの10年で終了してしまった。


時間に余裕ができてしまった。

開拓が完了したとき村民の一部は急死してしまう人たちが多かった。


ほっほっほ、村長曰く、彼らは開拓に兆しは見えてしまったが故に開拓を達成したことで満足してしまったのじゃ。

彼らは生に執着を失ってしまったのじゃよ。

ワシらのように開拓は通過点でもある者と開拓がゴールの者では満足感が違い過ぎるのじゃ。


俺も開拓がゴールだと思っていたけど本当にしたいことは違った。


建国をしたければ戦争で一国の戦力があることを証明してこい。

ついでに幼馴染のことも見てきた方がええぞ。

その方が面白い。


それで俺が戦場に行こうとしたら親父が手土産を持たせてくれた。


まっさらな白紙の本だった。


「お前は今回が村に出る初めてのことだろう。知らないことがたくさんあるだろう。もし知らないことがあったらその本に書いておけ、後で教えてやるからな。」


開拓が進み過ぎて外に興味を持つことができなかった俺への親心、この時初めて父親を実感した気がした。

いや、今までも感じていた。

初めて自分の無知を知ることができた気がしただけだ。

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