第54話

「ではこれより高等部入学試験を執り行う。はじめ!」


筆記試験は簡単なものばかりだった。

4時間の試験時間に対して30分ほどで終わってしまった私は眠気との戦いだった。

見るに見かねた試験官が退出してもいいとの旨を伝え実技試験を1人で執り行うこととなる。


「実技試験は模擬戦闘だ。武器はなんでも良し好きなものを取り扱いなさい。」


試験官らしき女の人は淑女らしからぬ仁王立ちで鎧を着込んでいた。


「鎧の着用も認めるがそれにかかった時間はペナルティとする。」


鎧?そんなものはあっても意味がない。

むしろ位置をバラしてしまう無用の長ものだとユウゴ義父さんは言っていたけどまだ使ってる人は居たんだ。


「それと試合開始の合図は無いからな!」


その言葉と同時に私に剣を振り下ろす試験官さん。

なんという下手な手を使うんだろう?

私なんてその手をやってもユート倒せなかったし剣を振り下ろす速度も遅すぎる。

これじゃあ眼を瞑ってでも避けられてしまう。


「ねえ、試験官さん、真面目にやってよ。」


「ほほう、流石に飛び級するだけはあるようだな。では本気で行くぞ。」


なんでわざわざ攻撃するときに声を出すんだろう?

そんなことをしたらユートに逃げられちゃうのに。

それにガチャガチャ言い過ぎ、そんなに音を立てたら背後からユートを抱きしめられないじゃない。


「私の本気をいとも容易く避けただと。流石勇者か。」


あ~早くあいつに会いたいなあ。

早くユートに勇気を振り絞りたい。

私が勇気を出すんならあいつしかいない。


「でも避けてばかりでは試験は合格にせんぞ!」


でもあいつに告白されたいな。

あいつに告白されて…………告白されて……………………!


「むりぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!」


風邪を引いた時くらい顔が熱くなって幻影のユートにフルスイングをかましていた。


「グフォ、流石勇者、武器を持たずしてもこの攻撃か…………。」


今当たった確かな感触はユートのモノではなく試験管の胸だった。

鎧は剥がれ落ちその着用者の試験官は倒れており意識は無い。

だが目の前にはキツく締め付けられていた双丘が開放的な空間に戻ってきたことを鼓舞するようにその巨大な壁をそびえ立たせている。

なんか羨ましい反面ムカついてきたので何度もビンタすることにした。


「ちょっ、マリアンヌ、試験は終わったんだ。すぐに戻りなさい。」


お父さんがなんか言っている気もするが今はこの壁をいかに崩すのに忙しいのだ。

後にしてほしい。

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