第53話
「き、貴様!」
王子が動けば動くほど滑稽になっていく。
最初にズボン、次に髪、まつげ、眉毛、上着とどんどんエスカレートしていった。
「き、貴様、覚えていろよ〜!」
物語のよく冒険者ギルドにいって新人に絡み込んで撃退される新人潰しさながらの三下セリフに今の状況を見ていた人をは笑いを堪えていた。
かくゆう私はユートとあのバカを比べることに専念しているためそれには気づかない。
「やっぱりユートは流されないのよね。」
自分の目的のためなら何を言われようと行動し続け刃向かい続ける。
もし私が囚われのお姫様でユートが私を助けてくれる隣国の王子様だったらどんなに良かったことか。
ずっと鏡のように自分だけをその瞳に写してくれるに違いない。
それに比べて今日絡んできた、あのバカはどこまで行っても治らないどうしようもないバカだ。
清々しいほどにまで人に流され多数決が最も正しいと感じ続けるバカだ。
私だって、王都にいる方が幸せな生活を送れると思っている大多数の中の1人ではあるが、ユートのように住み慣れた土地がもっとも幸せを感じる人が一定数居ることは理解している。
「それなのにお母さんはユートじゃない方が幸せになりやすいって言うけど、この学園にはあのバカが蔓延っているんじゃユートの足元にも及ばない子しかいないじゃない。」
ユートと結ばれるにはどのくらいの時間がかかるかはわからないし並の人よりかは結婚まで行くのにも時間がかかるかも知れない。
でも、たった一度で良い。
ユートの1番に成れたとき、
私はこの世界一の幸せを手にする気がする。
「ねえ、お母さん。バカたち全部叩きのめしていい?」
「それはちょっと……。」
「ユートより弱い奴なんかと青春なんかできないし一石二鳥よ!」
ユート以上にいい男がいないことの証明にも繋がるし他のバカも来なくて正に一石二鳥だ。
それに王都で屋敷を建てるにはそれ相応の功績が必要だって言ってたし今のうちに恐怖で縛り付けておけば後々の軍隊を持ったときに整理が楽だしね!
「うーん、娘が害悪村長の影響を間接的にだけど受けている気がするわ。」
このままでは王都に返り咲き婦人会の裏を制圧する野望が潰えてしまうかもしれないと私欲に走っているルチアであったがその強欲さをマリアンヌは引き継いだのだ。
「なんか、俺からすればマリアンヌは本当にお前の子だって思うけどな。」
精魂枯れ果てるまで搾り盗られてマリアンヌが生まれたのだが子どもが欲しいと言うなり襲われたのだからこれを似ずと言わずしてなんというのかと聞きたいマリアンヌパパであった。
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