第52話

「どこが偉いのだと。私はこの国王太子だぞ。自国の王太子すら知らないとは自分の無知を知れ!」


「じゃああなたは王太子としての仕事をしたの?」


「もちろんだ。私は王太子として他国の留学生と交流を持ち着々と国際情勢の統一化を図っているぞ。」


この王子は何をいっているのだろうか。

国際情勢の統一化というのは文化の統一化と言いたいのだろうけど、そんなことは現状不可能だ。


「それはあなたの都合でしょう。あなたが国際情勢の統一化をしたいとか言っているのならまず学問を辺境の村にも行き届かせないとこの国情報の共有化だってできてないじゃない。」


にわか知識ではあるが私自身の考えは間違ってはいないと思う。

というかこの王子は本当にバカなんじゃないかって思う。

勉強はできているんだろうけど時事が全くできてない。

田舎にいた私でさえ情報を知ることにのめり込んでいたと言うのに人を纏める村長はその数倍は行商人のおじさんから話を聞いていた。

なのにこの王子は馬鹿すぎる。

ちょっと考えれば自分の矛盾点がいくつも出てくるのに気がついていない。


「平民は黙って王の言うことを聞いていれば政治は成り立つ。あくまでも国同士問題なのだ。国民は関係ない。」


「へえ、この国じゃあ王族は法の上に立ってはいけないなのに?」


「なんだその法は!私は知らんぞ。」


お母さんや王妃様から聞いた話だとこの国で最初に習う法律だと聞いたし間違いはないはずなのだけど、天才と言われて頭から抜け落ちたのかな?


どう切り返そうか悩んでいるとお母さんが前に出てきた。


お父さんを叱るときと同じ眼をしていたので私がとやかく言う必要は無くなった。

こうなったお母さんは最恐なのだ。

あのユートですら押し黙る怖さだから驚きだ。


「あら、アーサー王子はご存知でないようで?では王妃様のご友人として私が報告しなければなりませんね。」


「何故この田舎者の親である貴様が我に説教をしなければならないのか。」


「王族が最初に習う法律を忘れているあっては学園の飛び級も取り消しにしていただく必要がございますので。」


流石お母さんと言うべきか使えるモノは徹底的に使って追い詰めていっている。


「貴様は平民なのだから黙って王族の言うことを聞いておけばいいのだ!」


「うるさい。権力の暴力をふるうならあなたは物語の魔王と同じ。勇者にかけてあなたを討伐するよ。」


私は静かに剣を抜いた。


「訂正。既に討伐した。あなた本当に天才なの?ユートならこのくらい普通に避けてたわよ。」


「貴様、いったい何を言っている。王族を前にして剣を抜く所業万死に値する!」


スルスルスル


何かが抜け落ちる音が響き渡った。

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