第50話

「なんで?」

「マリアンヌに学園の特待生として飛び級して欲しいのよ。」

「私は飛び級できるの?」


お母さんは常日頃から私に勉強を教えてきたし都会に憧れていたから今でもその学習内容は覚えている。

でもお母さんは自分の知識は今の知識とは違うかもしれないと前置きを入れてから私に教えていたので本当にあっているかはわからない。


「一応私の教えた範囲を覚えているのであれば学園で飛び級しても恥ずかしくない勉強はできているわ。」

「ふーんそうなんだ。」

「それに色々経験した方が人生の景色が変わってくるし勇者としての教育が本格的に始まる前に青春を謳歌するのも大切よ。」


一応私の学力はこの王都でも通用するレベルらしいが青春はユート以外とはしたく無いと思っている。

表面上はどうしても否定してしまうが心の奥底ではユートのことが好きだ。


生まれた時からずっと居たしものすごい眼差しで畑を見つめる彼の目に私は見つめられたいと思っていた。

しかし、村を出るまでそのものすごい眼差しで見つめられることは一回も無かったが、王都に行って自分がその目の中に入れるように自分を磨いた時に再び訪れようと思う。


「いろんな人との関わり方は知った方が良いわね。好きな人にも好かれたいのならまずは自分を知りなさい。」


私をまた見透かしたのかモルドレッドさんが話しかけてきた。

既に私の考えていることはお見通しようだ。

すごく気味が悪い。

「自分を知る?」

「自分の強みを知らないと好かれたくとも好かれることはないわ。本当に彼に好かれたいのならね。」


まず自分を知ることができなければ相手のことを知れるとは思うな。

それがこの国貴族が最初に習うことだった。


「べ、別に好かれたく無いけど学園には行く!」


すぐにわかる嘘をついた。

本当はアイツのことが大好きだ。

いつも抱きしめて寝たいくらいには大好きだ。


「それはどうして?」

「美的感覚を養うため!」


これは屋敷を建てるときに私の美的センスを養うための必須事項だ。

もちろん学園に行っても恋愛をするつもりは一切無いがこれもユートを捕まえるための下準備としてすぐにでも卒業できるくらいの勉強をしてやると心に誓った。


「ふむふむ、確かに大義名分ではあるわね。じゃあその案で行くわ。ルチア、色々書いてもらう書類はあるけどお願いね。」

「旦那が書くモノはないのかい。」


こうして私の学園行きは決まり勇者としての最初の英雄譚が始まりを告げたのだった。


でも、このとき私は知らなかった。

あんなことをして好きでもない人に付き纏われるハメになろうとは……


「うんこれも美味しい。」


熱心にお茶請けに舌鼓していた私は後悔することとなった。

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