第47話
「じゃああなたは王宮の自室に行ったら荷解きの方をお願い。マリアンヌは私たちが預かるから、嫌とは言わせないわよ。」
「ああ、王妃様の用事だから大丈夫だ。」
私たちはお母さんと王妃様の婦人会という名のお茶会に参加することになった。
「初めましてマリアンヌちゃん。私はこの国の王妃のアストリアよ。」
「よろしくお願いします。」
「ルチアとは同級生だから親戚のおばちゃんくらいに気軽に声をかけて良いからね。」
アストリアさんは気軽にしてくれていいと言っているがさっき会談に割って話しかけていた王子が気になる。
「あの人は怒らないの?」
「あの人?」
「王様の息子。」
「ああ、アーサーのことね。一応あの子もあなたと同じ歳なのだけれど学園で飛び級していて天狗になっているのよね。」
都会に憧れていたマリアンヌは都会の知識も予習済みだ。
飛び級の意味も分かるし勉学も村長を除いて村の誰よりもできていた。
流石に流行などは行商人経由のため遅れると思いその辺りをこの婦人会で聞きたかった。
「天狗?」
「調子に乗っているのよ。それに他国の価値観を知ったことで自分が頂点に立つ存在だと過信しているのね。そんなんじゃ魔王を倒せる国にはならないというのに。」
「飛び級に歴史は無かったからしょうがないと言われればしょうがないけどこれから婦人会で学園に対する署名活動を行うつもりよ。今その会場に案内するわ。」
この王宮では臣下たちの妻も何人か助手として連れてきていいこととなっている。
侍女の育成やマナーなどの家庭教師として日々訪れる人は絶えないが日々記録を残しそれを10年単位で保管する徹底ぶりを見せているので暗殺者が来てもすぐに身元が判明する。
逆を言うと身元が判明していないものは王宮には居ることは無かった。
ある意味で他国の間者でさえもこの王宮に入ることは出来ても自国の情報を漏洩するだけの損の方が多い結果となっている。
「さあ、ここがお茶会の場所よ。礼儀作法はまた押していくから少し待っていてね。」
目の前に広がるのは色のオンパレード。
岩の色一色淡だった光景とはわけが違い、色とりどりの食べ物、花、椅子、机、食器。
世界はこんなにも色にあふれていたと思うほどの綺麗な光景だった。
「やっぱりあの村から王都に帰ると色が綺麗に見えるわね。」
「気に入ってくれたようで何よりだわ。それにマリアンヌちゃんも年相応の反応をしてくれてた新鮮だわ。アーサーはこんな反応してくれることは無かったから……。」
我が子にこのような反応をしてほしいというのは我が儘かもしれないが感動という重大な経験を与えてあげたかった親心の葛藤が見え隠れするアストリア。
普段から煌びやかな生活をしていれば目につくのは汚ればかり、感動を覚えることなく育ってほしくないと四苦八苦している様子がルチアには見えた。
「やっぱり初めから王都で過ごした人と田舎から来たとじゃ感性が違うのよ。人間、上を見続けたらきりがないしね。」
「そうね。でも偶に素朴を楽しみたくなる時もあるのよね。」
「アストリアはフライパンで焼くパンでしょう?」
「流石ルチア。私の好みを分かっているわね。」
パン窯は出来て日が浅いわけでもないがこのアストリアはちょくちょく庶民的なものを好む王妃だった。
「だって侍女長の得意料理だったじゃない。」
「そうねあなたのおばあさまの得意料理だったわね。あの人パン窯よりも美味しいパンを焼いてくれるんですもん。」
「昔話は後にしてマリアンヌが待ちきれないようだからお茶会を先に始めましょうか。」
「ふふふ、確かにね。マリアンヌちゃん今日はたんとお食べ。」
許しを得たマリアンヌは椅子に座って美味しそうな白いものに赤い果実が包まれたカラフルな食べ物を口にする。
「なにこれ、甘い?」
「あら甘いものを食べるのは初めて?」
「食べるとしてもクッキーくらいのモノだし生ものは初めてなのよ。」
「そうなの!じゃあショートケーキを食べるのも初めてね。まだまだいろんなケーキがあるからゆっくり食べてね。」
「うん!」
フォークの使い方はなんとか様になっている程度だが6歳児には上出来過ぎた。
侍女も特に不快な表情をすることも無くお茶会を進められている。
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