第36話
「親父おかえり。」
「おうただいま。コウモリのヤツはこの中に入れてあるぞ。」
「うんありがとう。」
「そいでアレなんだが……。」
親指でスライム三粘衆が建造した城の模型を指さす。
「ねえ親父聞いてよ。ピグミーたちずっと遊んでて畑仕事手伝ってくれなかったんだよ。」
「いやそっちじゃなくてだな。この城を見てなんとも思わないのか?」
「まだまだ先のことだし今はまず年を楽に越せるだけの基盤を作らないと。」
ユートは城には見向きもせずに畑のことだけを考えていた。
もちろん後々城は必要になるだろうが今はモンスターやきちんと1年越せるかもわからない状態だ。
そんな中食料以外のことに目を向けていては明日には死んでしまうかもしれない。
建物を建てられるのはきちんとした時間と時期をみて判断しなければ発展ではなく崩壊を招きかねない。
と村長は言っていた。
村長は自分自身も村人と同等の量の畑仕事をしながらさらに開拓する分の畑も耕したり柵を設けたりしているのだ。
そしてユートの母親のような死人が出ないように薬を定期的に確保するため副業も行っていた。
明らかなオーバーワークとも言える村長の仕事量を当たり前に思ってはいないが人の命を預かる身として最低限食っていけるだけの保証はしなければならないとユートは思っていた。
その気負いは間違ってはいないがまだユートには早いモノで村長が死ぬまでは気負わなくてもよいモノだ。
「なら基盤の基盤を作っているのは村長だろ。お前はその先の基盤を考えればいい。城だってその一環だ。」
「どうして?」
「ここ最近のモンスターの多さは異常だし防衛のためにいくつか砦となるものを建設した方が良い。一応城壁なんかも建てられるのなら建てた方が良いし砦を基に城を建てることもあるからガンサムやピグミーの城は定石に沿った良い城だしスミスの城ももしこの荒れ果てた土地に木が生えればすぐにでも建てられるようになる利点の有る城だ。それにきちんと仲間になったモンスターの意思を尊重してやらんと村長たちのように仲良くは慣れないぞ。」
きちんと仲間を思う心をここで身につけさせなければ指導者になるかもしれないユートの人望がつかめなくなると思い説教気味に諭すユウゴ。
「わかったよ。みんなのお城を見てみるからスミスはちゃんと畑にアレを植えてよね。」
「「「Sura!」」」
スライムたちは威勢よく返事をしてユウゴの後ろを駆け回っていく。
「あれ?俺は確かにここに蝙蝠の糞を置いたはずだが?」
ユウゴが振り向くと既に糞が入っていた麻袋が消えていた。
スライムたちが盗ったのかと思ったが彼らが口にくわえている様子はなかった。
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