第33話
「知らないこと?」
「ああ、ユート、お前は何を知らない。」
「マリアンヌの考えてること。」
真っ先になにを知らないと言われて思いつくものだ。
人の心を読む、考えるのは難しい。
特にいつも自分の本心を自分ごと隠そうとしている人なら尚更だ。
「なら少しは行ってみても良いんじゃないか?王都に。」
「うーん?」
「まだ悩むか?」
「マリアンヌが王都にお屋敷を買ったら見に行っても良いかなって……それまでは僕が大きなお城を作った方が良いかもしれないって思った。」
それまではライバルだとでも言うかのように良い笑みを浮かべた。
「ったく我が子ながらデッカイ夢だな。」
「そう?」
「まあ俺だってこの家では城主だ。でもユートは違うんだろう?」
「うん、もっとデッカイ家が欲しい。」
開拓村に来るまでは贅沢な暮らしをしていた。
だけども妻がこの開拓村でしか住まないと言った以上妻と一緒に居ること以上の幸福を考えられなかった俺はすぐに手放した。
そのせいで酒に逃げてしまったのだが大切なものが何かに気づいたときに父としては認めてくれる子がいたから立ち直れた。
「デッカイ家を建てたいなら戦場で手柄を上げるかこの土地を開拓し尽くすかの二択だな。……ボソ……これはまだライバルって方がお似合いかな。」
「最後なんか言った?」
「いや、どっちが先かなと思ってな。」
「それはマリアンヌの方が先じゃない?」
「わからないな。お前の捕まえて進化させたスミスがこの不毛の土地に魔法をかけてくれるかもしれないだろう。」
「でも大丈夫なの?」
誰も見たことが無い上位種の存在は期待が持てる反面、破滅への一歩になるかもしれない可能性を秘めている劇薬だ。
しかしリスク無き発展はほとんど皆無に等しい。
村長の言っている肥料栽培も然り、スミスを用いた栽培方法も然りどちらにせよ病気にかかったりするリスクはある。
長い年月をかけてその毒性が現れることもある。
冒険者でも毒を浴びたら一生付き纏われる可能性があるからかなりの用心が必要だと教わっていた。
「ああ、確かに大丈夫かはわからない。そのための実験だろ。賭けるにしろ賭けないにしろ現状を打破するには賭けるしかないのさ。」
ペット(命)は村人を含めて行われる。
責任は確かに大きい。
「確かに人の命を背負うのは心苦しいかもしれないな。でもそれら全てを賭けてこの村に村民として居座っているんだぜ。」
「そうなの?」
「もちろんだ。一旗を上げるのに意味わかるか?」
「領地を得ることじゃないの?」
「それしか解らないようじゃまだまだ半人前だぞ。まあとりあえず城を建ててみようぜ。」
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