第32話

「そりゃあ悩むよな。」


ここは平和な場所でもなければ、食料が有り余るほどあるわけでもない。

毎日畑を掘り返し芋の種を植えていきそれを塩と交換したり親父が持ってくる肉と交換したりするこたでやっと命を繋いでいける場所なのだから。


「そりゃあ遊ぶ時間はあったほうが楽しいさ。俺はユートにもっと遊ぶ楽しさを感じてほしいとも思っているが普段お前がしていることも正しい。だから悩めるんだろ?」

「わかんない。」


ユートはまだ自我の形成が薄い。

知識や経験と言ったものは開拓に関することならそこらの大人以上にあるだろうがそれ以外はほぼ皆無に等しかった。


ユウゴもその話は村長から聞いていたし自分が再度ユートと向き合うと決めたときはせめて人並みくらいには交友関係を作ってやりたいと思っていた。


だがそれが子どもが望むことかと親心が待ったをかけていたがユートが迷いがあるようで助かった。

迷いがあるというのはまだ交友関係を持ちたい意思があるのだから。

子どもに色々な経験をさせてやりたいが押し付けるのは良くない。


自分だって冒険者に成りたかったのは自分がデッカイオトコになって見せる意思表示だった。

ユートはその意思表示が開拓であらわされている。

次代に繋げられるような、希望が持てるような基盤をせめて作り上げたい。


未来に繋げる意思表示、息子はそれで満足するかもしれないがそれでは誰からも評価されないかもしれない。

あの性格だ。

自我を通すためには他人と敵対しようと意を返さないユートにとっては敵を作りやすいだろう。


マリアンヌちゃんはまだユートに恋をしているように見えたから大丈夫だったが王都に行けばその気も変わるのは早いだろうと推測できるがマリアンヌちゃんはマリアンヌちゃんで中々にヤンデレな素質が見え隠れしているから50:50と見るのが妥当だろう。

まあそれで賭けが成立するくらいには知っているからな。


ちなみに村長は結婚するに1票、行商人は王都で新たにボーイフレンドができるに賭けている。

どちらも15に成るまでの賭けだ。

俺はどちらにも賭けてはいないが個人的には結婚はしないが最終的に行き遅れと呼ばれる20くらいに成ったら結婚するんじゃないかと踏んでいる。


「わからないんだったら知った方が面白いぞ。」

「うーん。」


先ずは知ろうとすることから、知らないことを知らなければわからないところもわからない。

子どもなんて特にそうだ。


何が危険かわからない

何が相手を傷つけたかわからない

何が面白いのかわからない


そして足りないものがあるとそちらばかりに目が行く。


「ある冒険者の言葉なんだけどな、生き方というべきなのか、それとも冒険者たるものそうであれと言いたいのかはわからないんだが面白いことばがある。」

「なに?」

「まずは「己の無知を知れ」って言葉さ。自分には知らないことがいっぱいあるからまず知らないことが何なのかを知ろうって意味だと思うんだがこの言葉今のユートにピッタリだと思わないか?」

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