第31話
「Sura!」
親父と話しているよ赤スラ坊が鳴き出した。
「赤スラ坊?」
ベシッ!
ユートの頬を容赦なく引っ叩くフルスイング。
もみじ痕ならぬスライム痕が頬にできていた。
「うーん?」
「痛くねえのかよ?」
「痛いけど赤スラ坊の言いたいことがわからなくて。」
ベシッ!ベシッ!ベシッ!ベシッ!ベシッ!
「SuraSura!Sura!!!」
妬いている女子の如くユートの足を叩いていく。
「なんか嫁に似てるなこのスライムは……。」
「母さん?」
「ああ、あいつも名前で呼ばないとこんな感じで怒っていたな。」
「マリアンヌもそうだよ。」
スッと遠い目をする親父。
それにクエスチョンマークを浮かべるがとりあえず親父の言いたいことは分かったので深くは追及しないことにする。
「赤スラ坊じゃなくてピグミーと呼んでほしかったんだね。」
コクリと頷いて見せた。
「そういえばマリアンヌは元気にしてるかな?」
「お!」
「どうしたの親父?」
「いやユートにも友達を思う気持ちがあったなんて感動しているだけだ。」
凄い失礼なことを言われた気がしたが実際事実なので聞き流すことにする。
自分は夢に生きる人物だ。
それで人間関係がどうなろうとどのようにして死のうと関係ないと思っている。
たった一度の人生だ。
たった一度の生ではない。
たった一度だけの知の欲求を持った生を楽しまないでどうする!
村長から教わったわけでもない親父を見て感じたわけでもない。
ただ一つ見聞を広めないからこその自由を謳歌しようとした結果その考えに行き着く。
今日マリアンヌの動向が気になったのは幼馴染のよしみという感情でしかない。
しかしそのよしみという感情こそが人間らしさだということにはユートは気が付いていてない。
「嫁の口癖だったんだけどよ、縁は向かってくるものもあるけれど欲しいと思って掴み取るから面白いのよってな。」
「どういう意味?」
「ようは人付き合いも開拓と同じで色々突っ込んで失敗する方が楽しいってことだよ。」
「なんとなくしかわかんない。」
「そりゃあそうさ、まだユートの中じゃあ人っていうのは村と吟遊詩人、そして行商人のおじさんくらいだろ?」
親父の言う通り僕の交友関係、正確には人との関わる回数というのは極端に低い。
マリアンヌが居なくなってからさらに希薄なものになっている。
それでもいいと思う反面この地を開拓出来たら、という先のことを考えると確かに人と関わった方が良いかもしれない。
「でもさ。僕が死ぬまでに開拓できないと思うんだ。だからこの村の次の架け橋を作りたい。それ以外に時間をかけて良いのかよくわからない。」
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