第29話
「赤スラ坊は何の名前が良いの?」
一通りのユートをこねくり回したスライムたちは「子どもにつけたい名前100専」を開き各々がこの名前を付けてくれとページを見せ主張してくる。
メタルスラ坊はガンサム。
緑スラ坊はウィリアムスミス。
どういった経緯で考えているのかは不明だが文字と発音だけで決めていた。
そして赤スラ坊だけは熱心に熟読しており、ユートの言葉もいらないのか本を普通に読めているようにも感じる。
「赤スラ坊はいつの間に文字を読めるようなったんだろう?」
この国の識字率は極めて低い。
冒険者ですら数字しか読めないものも多数いる。
しかし村長が文字を読めるため定期的に授業を行う。
村長曰く先の未来のことを考えて税をちょろまかされないようにするためと言っていた。
その他行商人のおじさんや吟遊詩人といった方々から他国の文字、言葉も教わっている。
「でもこれ僕に読めない文字も入っているんだよね………。」
人物名というだけあって固有名詞に成るため発音が解らないスペルも多い。
そのせいもあってか赤スラ坊の読んでいるページが理解できなかった。
「赤スラ坊決まった?」
フルフルと首を振っていることからまだ悩んでいるらしい。
することも無いのでメタルスラ坊もといガンサムと緑スラ坊もといウィリアムスミスの名前に置き換えていくことにした。
「ねえガンサム、ウィリアムスミスって長くない?」
ガンサムはともかくウィリアムスミスは長い。
一言その名前を叫ぶのに6歳児の肺の3分の1は使っている気がする。
その愚痴をこぼすとウィリアムスミスは考えているのか赤スラ坊から本をひったくるとウィリアムスミスのページを出してきた。
「なに?」
全部読んでという感じでぴょんぴょん跳ねている。
「えっとウィリアムスミスとはかの高名なスミスが名乗った別名であり、愛称はスミス、主にモノづくりに携わる子どもに着けられる縁起物の名前です。」
指でなぞって本を読んでいるのでスライムたちもある程度理解ができる。
そしてスミスという部分を強調し始めた。
「じゃあウィリアムスミスで普段はスミスって言えばいいの?」
コクリとうなづいた。
「赤スラ坊ごめんね。今返すよ。」
赤スラ坊は首をフルフル振ったかと思うと思いっきり飛び上がり村長の保有している本棚の中から一冊の本を落とした。
「ん?」
赤スラ坊はページをどんどん開いていき一つのページに辿り着くとページを開くのを辞めた。
そしてこの文字を見てと言いたいのか触手を一本出した。
「これなんて言うの?」
そこには神々の神話が星々の歴史と共に綴られている。
だが赤スラ坊の指す文字はユートは教えてもらうことのなかった文字だった。
「これ村長に聞いても教えてくれなかったんだよね。」
「その神様の名前はピグミーと言ってな。もしユートが女の子だったらつけようと思っていた名前なんだよ。」
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