第27話
「親父ぃ!村長ぅ!行商人のおじさん!」
マリアンヌとユート、王子との恋愛談義をしている最中に突然扉が開くものだから皆が皆お茶を吹いた。
「あれ?親父たち何を飲んでるの?」
「ユートにはまだ早い飲み物じゃ。」
実際村長たちが飲んでいるのは王都でも人気が無いセンブリ茶に近しいもので無茶苦茶苦い茶だった。
「ふーんそっかそれで村長!これ見て!」
ユートはそう言って草を取り出す。
「これは…。」
「マジか…。」
「ほほう!良いもん拾ったんべな。」
三者三様な反応を示す。
その3人の反応を見てユートは答えを言ってくれるのをじっと待っていた。
「ただの雑草じゃな。」
「ただの雑草だな。」
「ただの雑草だべ。でもまあこの土地でそれが見つかるんはすんげえことだべ。」
「雑草って何?」
あ、教えるの忘れてたと言う表情をした後村長が口を開いた。
「ここの不毛の土地以外の土地では食べられないもしくは毒があるといった人間に不利益、無価値な植物のことを総じて雑草というのじゃよ。」
「んだべ、でもこの不毛の土地から雑草が見つかったんことは誰かが植えているべかあるいは……」
「この不毛の土地に適応した植物だってことだな。この不毛の土地じゃあ種は芽吹かないし持ち込むしかない。風の流れできた植物の種も発芽することなく枯れていくからすげえ発見だぞユート。」
とりあえずの現状を把握したユートはどのようにして見つかったのかを話すことにした。
「この草、この子が僕の畑に潜り込んだら生えてきたんだ。」
いつの間にか緑色に変化していたスライムを見せる。
「村長、こいつ知ってるか?」
「儂も初めて見る種じゃな。」
「オラさも初めてだべさ。」
「?緑色のスライムは居ないの?」
緑色だから居ないのかと不思議に思い質問をぶつけてみる。
スライムの種は千を超える。
村長は記述されていたスライムなら全てを言い当てることができる知識人だ。
ユートの子育てを請け負う当時から村長が話せる面白い話は大半がスライムの話で多種多様なスライムの話をしてくれていたのだがその知識に無いものなんて要るのかという純粋な疑問だった。
「緑のスライムはもちろんいるんじゃがその大半が植物の性質を兼ね備えた種じゃ、じゃがこのスライムは一見そのようなスライムに見えてそうではない。」
「?」
「植物系スライムの大半は動けなくなるんじゃ。だがこのスライムは動いておる。」
植物系スライムは細胞の皮の厚さが尋常ではなくさらに頑丈になるという恩恵を受ける代わりに動けなくなるといった性質を持っていた。
ただそれで弱いわけでもないため警戒するに値する種ではあるのだが……
「こいつはおそらく植物系ですらねえと俺は思うがな。」
そう静かに親父が呟いた。
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