第26話

「今日も畑耕そう。」


鍬を振り下ろしザクザクという音を立てるこの感触はとても心地良い。


「でもあれはなんていうんだろう。」


夢?の中に出てきた不思議な植物、村長たちが見ればただの雑草に過ぎないそれは未知のモノにしか見えなかった。

それだけに育ててみたいと思った。

それに限らず未知の植物というものを育ててみたいと思い始めた。


「あれ?」


洞窟に行っても見つからなかった野生のスライムが顔を出した。


「珍しいね、メタルスラ坊や赤スラ坊以外にスライムが来るなんて……。」


スライムは縄張りからじっと出てこない種がほとんどで赤スラ坊やメタルスラ坊のように単独で行動する個体は稀だ。


「君はなんでここに来たのかな?」


もうすぐ日が暮れるので畑仕事はやめにして、スライムに話しかけることにした。


プルプルと震えるスライムは実に美味しそうに見える。


もちろんユートの質問に答えられるはずもなく何やら食料を探しているようにも見受けられる動きしかしない。


「なんか食べたいのかな?」


何か餌になるものは無いかとポッケに手を突っ込むとあの草があった。


「あ、苦いヤツ。」


アレは夢ではなかったのかと疑問に思いながらも食べる気もしないので目の前にいるスライムに与えてみることにした。


「これ食べる?」


スライムは顔をパアッと明るくさせて一目散モシャモシャと食べ始めた。


「スライムにとっては美味しいのかな?」


赤スラ坊はそんなこと無いぞと言いたいのかユートの身体を突いてくる。


それを阻止しようとメタルスラ坊も動いている。


スラ坊はただ傍観していた。


「あ、食べ終わった。」


手の中にある草の感触が無くなることを感じるとスライムが草を食べ終わっていた。


「Sura!」


「しゃべった⁉︎」


今まで喋ったことのあるスライムに出会わなかったこともあり腰を抜かすくらい驚いた。


「Surasura!」


何かお礼を言いたいように聞こえる。

そして迷うように右左と歩いた後何か思い付いたのか身体をピンと貼り


「Surasula!」


身体の一部を削ぎ落とし畑の中に入っていった。

すると…


「あれは植物?」


先程のような雑草がどんどん生えてきたではないか。


「Suurasurasura!」


ピョコピョコ飛んで喜びを表していた。


一通り飛んだあとはユートに近づき一緒に連れってってとでも言うかのように肩に乗った。


それに呼応するようにメタルスラ坊も乗ろうとしたのだが…


「メタルスラ坊は重いからダメ。」


ユートに拒否されてしょぼくれた。

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