第24話
「ねえ行商人のおじさん、畑仕事あるからもう行っても大丈夫?」
「共鳴は良くあることだから大丈夫だべ。」
「そうじゃのう。特に危険になることも無いが体に異変を感じたら必ず戻ってくるんじゃぞい。」
「わかった!」
そういって鍬を背負いスラ坊たちと共に畑へと旅立った。
「スラ坊はこっちに残るんじゃぞい!」
スラ坊は無視してユートについていった。
「なあ村長。」
「よせ言いたいことは分かっておる。」
スラ坊が村長の言うことを聞かなくなってきた。
上位種が複数体現れることと言いスライムトレーナーの能力なのだろうがあまりにも異常に見えてきた。
「わしのスラ坊も既に上位種に変化していると見ていいじゃろう。」
「しかしそんな職業は……。」
まるで上位種を束ねた魔王を打倒した勇者ですら逃げることしかできなかったとされる伝説の存在。
「そう世界樹の守じゃな。」
「世界樹の守?てっきりモンスターの祖と言われた魔神かと思ったんだが?それに世界樹は勇者の味方のはずだろ?」
「ここ不毛の土地で先祖代々暮らし世界樹によってこの土地を追われた人々が語り継ぐ伝承がある。
世界樹は世界に根を張りつくそうとした。
世界樹は唯一にして全ての植物であろうとした。
しかしそれは叶わず神の怒りを買って折れてしまった。
だが世界樹が唯一の植物であろうとした魔力が土地に残り植物は根付かなくなった。
人々はそれを不毛の土地と呼んだ。
という伝承がのう。
世界樹の守はその世界樹を守る奴らじゃった。
モンスターの上位種を生み出していたのも彼らと聞いておる。じゃが世界はそれを隠した。」
「世界樹教か。」
世界樹教はこの世界最大の宗教。
その派閥は勇者を信仰する人間の派閥と魔王を信仰するモンスターの力を持った人に近い種族、総じて魔族と呼ばれる者たちの派閥に別れている。
どちらも片方を否定し自分が正しいと争いとが絶えない宗教だった。
「そうどちらも認めないからのう。しかし人間と魔族、その両方が混在する集落が僅かだが存在するのじゃ。」
勇者と魔王に力を与え戦争の引き金を引き起こして自分はのうのうと支配地を広げていく存在が世界樹とは誰もが信じたくは無かった。
「でもよう勇者がまた現れたってことはもしかして……」
「世界樹がまだ存在するやもしれぬがそもそも勇者は全身全霊を賭して勝てないとわかりながらも立ち向かうものの存在じゃ。」
「?」
「ほっほっほ、勇者とは読んで字のごとく勇ましき者。たとえ蛮勇だと理解しても立ち向かわなければならない。最初の一歩を踏み出す者のことじゃよ。だから世界樹にも立ち向かった。」
「だけどそれじゃあ……。」
神話と違う。
そう叫びたかった。
だが理想と事実は異なる、それを誰よりも知らなくてはならないのがハンターでもあった。
ユートは農民、知らなくていい事実を知らせる必要はない。
もし知りたいと願うのなら自分で探させよう。
「ほっほっほ、少しは父親らしい顔になったのう。」
「……ったく、そうだな村長、やっと父親に成れた気がするよ。」
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