第23話

「ねえ村長に親父は何を話しているの?」

「あ、ああ、今後ユートを狩りに連れていくかのことを話していただけだ。」

「そうじゃよ。」


二人はあからさまにごまかそうとした。

というよりかは恋愛感情に疎すぎるユートにはまだまだ先の話は聞かせない方が良いと判断しているためだ。


「でも親父は最初反対だったのに大丈夫なの?」

「今から医者に判断してもらってから決めるから村長の家に行くぞ。」

「うん。」


この村で言う医者は基本的に村長を指して行商人が来たときは行商人のおじさんの方が詳しいためそちらに詳しく聞くことがこの村の慣例になっている。


実際行商人のおじさんが来たときはとても村が忙しくなるので皆が皆必死なのが見て取れていた。

だが行商人のおじさんは子供好きでもあるので子どもの質問には積極的に聞き及んでくれる。


「ギー坊帰ったぞい。」

「もう帰ったんだべか?なんかトラブルでもあったんだべか?」


「そうなんじゃ。ユートが何かを発見したらスラ坊たちと共に倒れてしまってのぅ。」

「スライムと一緒に倒れたんべか?」


行商人のおじさんは村長からある程度事情を聞くとユートとスラ坊たちを見始めた。


「ちょっと触るべ。」


そういってスラ坊やユートの身体を触り始めた。


「うーん、とりあえずメタルスラ坊は変なもん食ったのは分かったんだべがそれ以外は特に異常が無いように見えたんだべからに共鳴でも起こしたんじゃないんだべか?」

「共鳴?」

「ユウゴの奴は知らんだべかまあソー坊の方がそのあたりは詳しいべからにそっちに聞いとくれ。」


村長の方を見れば何か引っかかるような顔をしていた。


「ふむ確かにメタルスラ坊はなにか食べて身体の色が変化しておるのう。……だがしかしこれは…………。」

「村長聞いているのか?」

「……ん、あゝすまんのう。少しばかり考え事をしておった。」

「よしてくれよ村長に引退されたら困るんだから。」

「それは歳だと言いたいのかのう?」


ジロリと睨まれるユウゴだったが苦笑いするだけだ。


「まあ良い。共鳴じゃがテイマーの適性を持つもの、もしくは長く同じモンスターと一緒に居たものが稀に起こる時間がぎゅっと詰まってモンスターとの距離感がとてつもなく縮まったように感じる現象のことじゃな。」

「それとメタルスライムが変化したことに何が関係あるんだ?」

「おそらくメタルスラ坊の変化に共鳴して他のスライムたちとも共鳴してしまったのじゃろう。」


だがそれだけでは説明できない事象があった。


それはメタルスラ坊の変化だった。


メタルスライムの身体は何かしらの金属で構成されている。

メタルスラ坊の場合は錫などの柔らかい金属と考えていた。


スライムがメタルスライムになるための条件として一定量の金属を取り込む必要がある。

スライムが取り込める金属は基本的に柔らかい金属だけだった。

これは村長自らスラ坊で検証していたことだった。


「だが……。」


アレは正に東洋神話の神器に使われたとされるダマスカス鋼、またの名をウーツ鋼。

伝承では神は人にある植物と鉄を授けて創らせたと聞いている。


そしてここは不毛の土地、野生の植物は一切生えない土地だった。


本来居ないはずの鉄でできたメタルスライムと植物が一切生えない土地で植物が無いとできない鋼が生まれた矛盾する事実に村長は思考を巡らせていた。

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