第22話

「だって自分で決めたことならどうなってもしょうがないもん。」


村長は他人と一緒にするということは責任を逃れたいという意思があることだとユートに教育していた。


「ホッホッホ、お主には無いものじゃよ。」

「ったく村長め……。」

「この子の教育をきちんとせんとお主の妻に顔向けできぬのでな。」


意思決定は自分自身で全て行う生き様こそユートの母親の生き様に他ならなかった。

たとえムカデの毒にやられようともそれで自分の与える栄養に影響が無いことを知るとユートに少しでも丈夫になってほしいという決断をしてもっと大きな街の医者にかかれば治るかもしれない身体を治しに行くことを拒み栄養を与え続けた。


父親であるユウゴはそれを黙ってみることしかできなかった。


なんせ生まれて間もない赤子でこんな食料も乏しい村で母乳を分けてくれるような人物も居ない。


しかし村に行けば治るかもしれないと説得はした。


だが彼女は言った。


私はここの土地で死ぬと決めたしもし移動しているとき倒れたら無駄足になる。

そんなことに時間を使うのならせめて腹を痛めて産んだこの子やあなたに一生分愛させてよ。


その言葉があったからこそ何もできなかった。

今のユートは正にその影を見ているようだった。


「まったく、本当にマリアンヌちゃんが可哀そうだぜ。」

「人の心は川のように流れていくものじゃ。忘れることは無いかもしれないがそれでも愛しているというのなら全ての立場を投げうってでも手に入れたい恋をしたときじゃな。」

「そうだよ。マリアンヌは王都で今頃遊び惚けてるんじゃない?すんごい行きたがっていたし。」


彼女はよく村人にツンデレとかって呼ばれているけれども意味は良く分かっていない。

村人たちに聞いてもお前にはまだ早いと言って取り合ってくれないからだ。

しかしアレはアレで刺激を求めたいだけのようにも見えるのでツンデレとはそういうことを指すのだろうとユートは勘違いしていた。


「まあ、確かにそういう見方もできるよな。」

「しかしマリアンヌちゃんにざまぁとか言われんと良いかもしれぬがのぅ。」


「いや、ユートの場合だとざまぁとも思わずに畑仕事進めそうだけどな。」

「それは確かにあるのぅ。」


二人が小さな声で話しながら今後起こりえる予想をしていた。


もしマリアンヌが王都で名声、実力をともに確立させた場合ユートの気を引きに行くかどこぞやの貴族と婚約して自慢でもしに来るのが目に見えているがまあ6歳だ性格がそのままになることは無いだろうと願いたかった。


だが小さいときに人間関係をこじらせすぎるとずっとひっぱいてく傾向にあるのもまた事実、その具合の判断がまだまだ難しかった。

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