第16話

「村長臭いよこの洞窟。」

「なんせコウモリの巣でもあるからのう。」

「コウモリの巣だとなんで臭くなるの?」

「あれを見てみい。」


土のようなものが見えていた。


「あれはコウモリの糞じゃ。」

「ねえ、アレは肥料にならないの?」

「へ?」

「糞を肥料にすることもあるって行商人のおじさんは言ってたよ。」


村長はプルプルと震えながら。


「それもそうじゃの。じゃがそれはユートの畑ですればええ、村では一旦デスカンクから始めることにするわい。」


誤魔化した。


「そういえばアレはなんで消えないんだろうね?」

「恐らく消えはするがそれが追いつかない速度で溜まっていくのじゃろうて。」

「それだけこの洞窟には食料があるんだね。」

「それはわからんのう。なんせわしらにはコウモリの食べるもんがわからんことじゃし…。」


村長はそれよりも今までユートの指摘に気づかなかったことを悔いていた。

確かに糞を使った肥料は耳にしたことがある。

この国ではポピュラーでは無く山間部にある地域の一部で特殊な処理を施した上で使用されているとは聞いていた。


「しかしコウモリの糞か……。」


コウモリは作物を育てる農家にとっては害獣では無い。

しかも土地によっては益獣とするところもあることから何かしらの害虫もしくは害獣を食べてくれると思われる。

害獣と言うのは畜産業を営む者たちだ。


コウモリは品種によっては血を吸うものが存在するらしくそれが家畜の品質を下げるらしい。


「ふむ面白いことになりそうじゃな。」


デスカンクでやろうとしていたことがもっと手軽なもので手に入るかもしれないと思うとほんの少し期待が持てた。


「ギー坊の奴に調べてもらえないか聞いておくか……。」

「村長?何を行商人のおじちゃんに聞くの?」

「ああ、ユートがやろうとしている肥料の作成方法じゃよ。それと気を引き締めなさい。灯りもない空間で薄らと視界は見えるとはいえ不意打ちされたら危険じゃからのう。」


そういって村長は後ろを杖で突いた。


「Gigi!」


緑色の人型モンスターゴブリンが倒れた。


「こんなふうに洞窟は色んな生物の住処じゃ気をつけんと死ぬぞい。」

「はーい。」


と返事をした時とても臭いニオイがした。


「む、デスカンクは近いようじゃ。ゴブリンは死ぬと魔石だけが残るから回収しておくんじゃぞ。」


モンスターには幾つか種類がある。

死体が残るタイプと魔石と呼ばれるものだけが残るタイプだ。

どちらにも魔石は存在するが肉体が残るのと残らないとでは対処の仕方が大きく違う。


「肉体が残るモンスターは持ちきれない分は必ず燃やさんと疫病が蔓延するかもしれんからきちんと燃やすんじゃぞい。」


「はーい。」

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