第12話

「スラ坊大丈夫?」


ここまで溶けているスラ坊を見るのは初めてだった。

いつも丸々としていて透明なかなり大きめなスライムなのだが……


「これスラ坊、疲れたふりをする出ない。」

「ソー坊のスライムはサボり魔だけんのう。」

「でもこんなの初めて見たよ。」


どんどんスラ坊の体が溶けてトロトロに溶けて地面に染み込もうとしている。


「スラ坊やそんなにだらけたいのなら今日のご飯は無しにしても良いのかのう?」


ビシッと瞬く間に元の丸々としたスライムフォルムに戻った。

だらけたかっただけみたいだ。


「スラ坊さぼるの好きなの?」


コクコク


「スラ坊はのう。昔から食べるか寝るということをしていたかったのじゃよ。」

「食っちゃ寝?」

「そう食っちゃ寝じゃよ。じゃが今回ばかりは働いて欲しいものじゃよ。」


村長は親父の腹をつついていた時のようにスラ坊をつついていく。

その攻撃を受けながらスラ坊は涙目になっていく。


「それでスラ坊に何をさせるの?」


ユートがスラ坊に仕事をさせる方向で進ませようとするとスラ坊の涙が決壊した。


「これスラ坊、ウソ泣きしても無駄じゃ。」

「ソー坊それは本気で泣いているように見えるんだべが?」

「気のせいじゃ。」


滝のように涙を流し身体を震わせているのだが……と行商人は言いたげだったが。


「とりあえずスラ坊にはユート君の畑で分裂体を出してほしいんじゃよ。」

「ほうほう、確かにスライムなら分裂体の大きさは自由だべしスラ坊の畑は広いべからな試しにやってみるのはアリだべ。」

「そういうことじゃな。」


「まあ今回はマリアンヌちゃん家族の手放した土地を使おうかと考えておるかの。」

「勇者様になったとこの家族は土地を手放したんだべか。」

「そうじゃ。当初の予定では分配する予定じゃったが皆自分の畑で精いっぱいとの意見が多かったからのう。」

「そうだべ。坊みたいにたくさんやろうとする奴はそんなにおらんかあ」


そもそもこの村は生きることで精いっぱいなのだ。

誰も改善するだけのやる気も体力も残っていない。


「最初は皆が皆、一旗揚げようと頑張っていたんじゃがのう。」

「今じゃんなことするのはお前さんと坊だけだべさ。」

 

自主的に開拓しているのは村長とユートくらいしかいない。

他の村人たちは畑仕事に従事していたりモンスターを狩ったりと忙しいと言えば忙しいのだ。


「そろそろユートにモンスターの狩りを教えても良いころ合いじゃしトマトの畑はスラ坊と新たにユートが捕まえてくれば良いしのう。」

「畑とモンスター狩りが関係あるの?」

「大ありじゃそれが今回スライムで代用する方法じゃからのう。」

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