第8話
「ホッホッホお主も狩人飯からようやく卒業したようで何よりじゃのう。」
「ふん、親が子どもの好物の一つも作ってやれないのは悲しいからな。」
「ほっほっほ、マリアンヌちゃんの真似かの?」
「真似じゃねえよ。普通に皮肉だわ。」
ほぼキレかけている親父を目の前にしてご飯を食べていく。
とは言ってもマッシュポテトに肉の塩シチューというものだが……
「しかしユートはマリアンヌちゃんについていかなくてよかったのか?」
「なんで?」
「王都ならもっと魚とか瑞々しい野菜が毎日食べれるんだぞ。」
「行商人のおじさんがくれるような奴?」
行商人のおじさんはいつもドライベジタブルや干し魚を売ってくれる人だ。
「あんな干し物じゃない。生でできたものなんだ。水分がいっぱいで甘くて美味しいものだよ。」
「でもさ。これだって美味しいじゃん。それに食べれてるだけで満足だよ。」
「そうじゃのう。ユウゴやおぬしは確かに都会の便利さを知っているであろうが、その便利さが何人にも便利に感じるわけじゃないんじゃよ。」
不毛の土地に不満があるのは他を知った者たちだけなのだ。
誰にだって水の良し悪しがあるように人には人の慣れた生き方というのが存在する。
そのことをイマイチ理解していないのがユートの父、ユウゴでもあった。
「もちろん存じ上げているつもりではありますが……」
「おぬしの妻であったわしの姪も都会よりもここの方が都に感じ取ったぐらいじゃ人には住みたい場所を求める能力があって変えられぬものは自身が移動すればいいのじゃ。」
「しかし何かあったらどうするのですか。」
何かあったら。
病気にあったら
未曽有の災害にあったら
食べたい作物があったら
そういったときに手に入りやすいのが都会でありそれだけ活動できる人が多いのも都会だった。
「なら作ればええじゃろうて。この子はそれを成し遂げたいんじゃよ。」
「そんなこと……」
夢物語だ
と言おうとした。
だがこの2匹のスライムを見れば可能かもしれない。
そんな期待が胸に浮かんだ。
「でもやはり危険すぎます。」
「じゃがどの建国記にも危険は付き物じゃった。今儂らが住んでいる王国もそうじゃ、魔王が蔓延る世に人々が結成して作った組織が前身と聞く。かつては徒党を組めば瞬く間に魔王に強襲を仕掛けられ全滅してしまう運命じゃった。それに抗おうとして国を作った。それと同じことよ。危険は承知の上じゃ。それでもなお夢に突き進むということは……」
村長はそれ以上は語らなかった。
なんせユウゴも知っている有名な話。
知らないのはユートだけだ。
そう王国民なら誰もが知っている有名な話
人はそれを建国の創始者の物語と言った。
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