第7話
「う、それは……」
「一流のハンターであったおぬしでさえ。いやおぬしだからこそこの村では装備が足りなすぎると理解できるな。」
「そんなに強いのこのスラ坊たち。」
勇者を倒すくらいだから強いことは確かなのだろうけれども僕の前では愛くるしいだけの可愛い奴だ。
今も俺の頭でゆらゆらと揺れている。
「強いのう。少なくとも軍隊一つ派遣されてしまうくらいにはのう。」
ポソリと軍隊が生きるかどうかは別としてのう。と言ったのは親父を除いて聞こえていなかった。
「へえ軍隊って何人くらいいるの?」
「ほっほっほ、それは勉強せねばわからんのう。まあおぬしも息子の言っていることが分かったのなら昼を食べに行きなさい。」
「わかったよ村長。」
今日、勇者を迎えにきた兵士たちが見たらすぐにでも軍隊を差し向けてくる。
しかし今朝方には既にマリアンヌ家族を連れて王都に旅立っているので後の祭りだ。
「ああ、後マリアンヌちゃんたちの家と畑は手放すそうじゃから村民の間で分割するまではほったからしにしておけばええぞ。」
土地はあくまでも開拓した人のもの、管理は開拓した人が行う。
つまりお金を払って人を雇うかしなければ開拓村を出て行った人たちは不毛の土地を持ち続けることとなる。
この不毛の土地はほとんど税金がかからないがそれでも持つだけ損な土地と呼ばれるほど売れない土地でもあった。
今までに何回か土地を売ろうと試し見た村人が居たがどれも売れるどころか金を払ってくれと言われる始末だった。
痩せ細り肥料となるものも無いものはない。
水はある程度はあるが枯渇しやすい。
草は生えず日中は火がつくような暑さと夜は雪山にいるような寒さの過酷な環境。
正に不毛の地としか言いようが無かった。
聞くだけならば岩石砂漠のよう聞こえるかもしれない。
しかしこの土地にはモンスターがわんさか居る。
彼らは砂漠で食料を失い弱った獲物から仕留めていく。
1人でこの土地を旅しようものなら野垂れ死ぬか、モンスターの養分とされるかそのような死に方しか選べない土地。
「ホッホッホ、私の姪は立派な息子のそばに要られたようでよかったわい。」
かの土地は神から見放されたと称されるほどの土地でも奇跡は起こる。
弱り死んでしまった女性は地に埋められた。
そこに生を求めて彷徨ったモンスターが餌とした。
そして奇跡は起こったのだ。
「姪の意思が引き継がれていることを祈ろうかのう。」
この村長は御伽噺や伝説というものが好きだった。
勇者の伝説はスライムに殺されて死んだと描かれている。
しかし数々の吟遊詩人が語る伝説の中に一つだけおかしなものがあった。
勇者を愛してくれる人は1人しかいなかった…という伝説が
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